日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 417
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ブルガリアにおける農村の生活環境
*小林 浩二伊藤 徹哉飯嶋 曜子小原 規宏イリエバ マルガリータカザコフ ボリス
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抄録

ブルガリアにおける農村の生活環境 -ブルガリアにおける農村の持続的発展の危機とその再生の可能性- Living Environment of Rural Areas in Bulgaria  —Crisis of Rural Areas and their Prospects for Sustainable Development in Bulgaria—  小林浩二(岐阜大学)*、伊藤徹哉(立正大学)、飯嶋曜子(獨協大学)、小原規宏(茨城大学)、マルガリータ、イリエバ・ボリス、カザコフ(ブルガリア国立地球物理学・測地学・地理学研究所) Koji KOBAYASHI (Gifu Univ.), Tetsuya ITO(Rissho Univ.), Yoko IIJIMA (Dokkyo Univ.), Norihiro OBARA(Ibaraki Univ.), Margarita ILIEVA, Boris KAZAKOV(National Institute of Geophysics, Geodesy and Geography, Bulgaria) キーワード:ブルガリア、農村、プロフェソア・イシルコヴォ、生活環境 Keyword: Bulgaria, Rural Areas, Professor Ishirkovo, Living Environment 1.はじめに  体制転換から20年、東ヨーロッパは著しく発展したが、その一方で問題点も顕在化してきた。そのひとつが地域格差の拡大である。都市=winner、農村=loserで象徴されるように、農村は“貧困 Poverty”という代名詞さえ冠されるようになった。しかも注目すべきことは、農村のなかにも格差の拡大が浸透しつつあることである。本発表では、農村の格差を念頭に置きつつ、ブルガリアにおける農村を対象に生活環境の実態とその特色を明らかにしたい。研究対象地域は、ブルガリアの北東部に位置するシリストラSilistraカウンティの若干の集落である。研究方法として、2010年9月に対象集落の役所、農業経営体等で聞き取り調査を行ったほか、住民を対象にアンケート調査を実施した。 2.ブルガリアにおける農村の特色 ブルガリアの農村を具体的にみると、ネガティヴな面として、人口構造が好ましくない、地方行政体にEUの基金を管理・運営する能力がない、基本的なインフラ(水供給、下水処理、道路ネットワーク、廃棄物処理等)が整備されていない等があげられる。一方、ポジティヴな面として、豊富で多様で自然が存在する、電力供給、コミュニケーション、生活インフラが比較的良好であり、集落のネットワークがよい、歴史的、文化的伝統に裏打ちされた農村コミュニティが数多く存在する等が指摘できる。 3.シリストラカウンティ、プロフェソア・イシルコヴォの生活環境  シリストラカウンティは、28あるブルガリアのカウンティのひとつであり、人口は12.9万人(ブルガリア全人口の1.7%)(2008年)、産業別雇用人口の割合をみると、第1次産業9.4%、第2次産業33.0%、第3次産業56.4%、その他1.2%)となっている(ブルガリアのそれは、それぞれ2.7%、38.4%、57.7%、1.2%)(2008年)。シリストラカウンティは、農業の盛んな地域である。 人口数及びその変化からシリストラの集落をみると、90%余りの集落が人口減少を経験しており、また、小集落で人口減少の割合が高い。 アンケート調査を実施したプロフェソア・イシルコヴォProfessor Ishirkovoは、シリストラカウンティの中央北部に位置し、人口1,202人(2008年)である。地域住民の生活環境(雇用場所・雇用機会、商業・サービス施設、医療・保健・高齢福祉サービス、教育など12項目)の満足度をみると、ほとんどの項目でポ゜ジティヴな評価となっている。これは、とりわけ、農業経営体(農業協同組合)と村の行政によるところが大きい。プロフェソア・イシルコヴォでは、農業協同組合であるNIVA93が雇用といった経済面だけでなく、経営によって得た利益を集落内の幼稚園、チタリステ(コミュニティセンター)、インフラ等の整備に投資している。また、農業実習生の受け入れ、個人農への援助(資金や農用機械の貸与)も行っている。加えて、村の評議会が中心となってインフラなどの整備・発展策を立案・実施するとともに、村民のためにさまざまな催し物を開催している。 4.考察 ブルガリアにおける農村の発展状況は、農業協同組合、NPOなどの地域住民及びそのグループ、行政、民間、の3要素から考察することができるだろう。こうした観点から、既述のプロフェソアイシルコヴォとともに、シリストラカウンティの他の若干の集落をとりあげ、集落の発展状況を比較検討してみたい。 参考文献 The European Agricultural Fund for Rural Development 2006.Republic of Bulgaria National Strategy Plan for Rural Development (2007-2013), 13-16. National Statistic Institute (2007): Regions and Districts in the Republic of Bulgaria 2002-2006. The European Agricultural Fund for Rural Development(2009): Republic of Bulgaria Rural Development Programme (2007-2013). 42-50.

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