本報告の目的は,沖縄本島を事例として,マングローブの分布地とその現状を把握するとともに利用方法を示すことである.そして,その利用の地域性について考察を試みる.
沖縄本島全域を対象として,マングローブの分布を把握した.その主要な分布地における面積については,航空写真を利用することから分布域を把握した.また,マングローブ林の利用方法については,近隣の住民への聞き取りとともに,エコツーリズムおよび環境教育に関わる方々への聞き取りを実施した.現地踏査は2009年度,2010年度,2011年度に実施した.
沖縄島では,現在,マングローブが燃料や柱材として利用されることはなくなっている.おもなマングローブ林の利用方法として,(i) 海岸・川岸保護,(ii) 環境教育,(iii) エコツーリズム,(ⅳ) 漁撈,(ⅴ) 植林活動,がみられた.
沖縄島のマングローブは,小規模であるが日本では鹿児島以南の汽水域でしかみることができないという希少性から,観光資源としての認識が定着している.エコツーリズムの利用では水質とともに,シーカヤックが利用できることが求められるため,北部地域で実施されることが多い.漁撈は水質の問題から,中南部では難しくなっている.マングローブを利用した環境教育は,マングローブ林の規模や水質にかかわらず実施可能であることから,沖縄島の各地で広く実施されており,沖縄島における主要なマングローブの利用方法になっている.