抄録
本研究は、農業向けの気象データダウンスケーリング技術の開発を目的としている。本発表では、東北6県で運用している農作物警戒情報システムの概要と、過去のアメダス観測値を1kmメッシュにダウンスケールした値を用いて計算した農業モデルの長期的評価について述べる。
1kmメッシュ気象データを用いて生育モデル、病害モデルを高い空間分解能で算出し、かつ、ユーザーが「場所/品種/移植時期」を入力することにより、各々の圃場の生長ステージに応じた適切な警戒情報を発信するシステムを東北農研と岩手県立大により構築し、東北6県を対象に2010年より運用している。2011年夏季からは、気象庁による2週間平均アンサンブル気温予測データの提供を受け、低温/高温障害の警戒情報の配信も開始した。昨年は極端な冷夏や暑夏ではなかったため、2012年度以降も継続して情報提供を行なう予定である。
続いて、葉いもちの発生予測モデルとして警戒情報システムにも使われているBLASTAMの精度を空間的/長期的に検証するため、アメダス内挿によって求めた1kmメッシュデータをBLASTAMの入力値として感染好適条件を求め、過去33年間の葉いもちの病害実績と比較した。もともといもちの発生の少ない地域のほかは、計算されたBLASTAMといもち病の発生面積率の変動はおおむね一致していた。