抄録
我が国の地域イノベーション政策について、政府(中央政府)の政策展開の推移を整理すると共に、現在中心となっているクラスター政策について、諸外国の政策と比較した。また、地方自治体(都道府県)における地域イノベーション政策について、自治体の科学技術振興計画(ビジョン等)の目的や分野を把握し、さらに振興計画と予算執行の関係についても把握した。その結果、地域イノベーション政策における地理的境界の概念が低下していることが明らかになった、また、各国中央政府は、政策分野(科学技術政策、産業政策、地域政策)を意識して地域クラスター政策を展開しており、政策分野の融合、及び各政策目的にふさわしい地域選定のあり方等が課題となっていた。一方、地方政府(自治体)の政策は、産業振興や新産業の創出を目的としており、組織面では商工労働部が対応していた。振興計画を策定・改定するという科学技術政策の積極性を示している自治体が、必ずしも予算面でも積極的な政策展開を講じているとは限らなかった。振興計画を策定・改定するという「政策としての積極性」と、予算面の積極性(公設試験機関の予算)の間に顕著な相関関係を見ることはできなかったことから、計画策定と予算策定の関係が直接的ではなくなりつつある状況が伺えた。