日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 808
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発表要旨
近代的地域形成主体としての地方有力商人の役割
近代的港湾都市・敦賀の形成と大和田荘七
*山根 拓
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抄録
福井県敦賀は古い歴史的な港町であったが,幕末開港には乗り遅れ,近世日本においては,ドメスティックな港町に留まっていた。しかし,明治期以降は京阪神や東海道方面からの鉄道の開通をきっかけに地の利を活かし,国際的港湾都市という新たな地域性を獲得していった。本報告では,敦賀におけるこうした近代的な地域形成の過程を追究し,それがいかなるメカニズムで生じたのか,特に有力商人のような権力を手にした「特別な人間主体」がその地域形成メカニズムの中で,どのような役割を果たしたのかを明らかにする。ここで参照する学問的枠組は構造化論の考え方であり,「特別な人間主体」として地域の社会構造そして地域そのものを規定し創造する主体として,近代の敦賀随一の商人であり実力者である人物,すなわち大和田荘七(1857-1947)の長期的な活動履歴に注目する。彼に関する伝記から,その地域認識・地域構想・地域実践の過程を解明し,それらを様々な事象から成る敦賀の地域史と比較し考察した。そこから,「特別な人間主体」として長期的に地域のあり方に強い影響を及ぼし,地域性を規定する力を発揮するようになった大和田荘七という地域形成者の姿が明らかになった。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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