日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 328
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発表要旨
国内における大手広告会社の事業所展開とその再編
*古川 智史
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抄録
 東京に一極集中する日本の広告産業において,これまでローカルな広告産業の存立基盤に着目した研究は少ない.そこで,本発表では,日本の地方都市における広告産業の特性を把握するため,大手広告会社の事業所配置に着目し,戦後以降の展開と再編の実態を把握することを目的とする.本発表では,年間売上高の上位に位置する電通,博報堂DYホールディングス(博報堂,読売広告社,大広),アサツーディ・ケイ(以下ADK)の事業所展開を,社史,業界誌,新聞記事等の資料から整理した.<BR> 大手広告会社を中心とした広告代理業は,戦後の民放の開局を契機に,地方への支所網を拡充した.当時,既に全国規模の営業所網を抱えていた電通もさらに支局を新設し,また東京以外に営業所を持たなかった博報堂も,大阪,名古屋,九州へ進出した.<BR> 一方,新聞社側の動向と密接に関わり,支所網が拡大する事例もある.読売広告社は,読売新聞社の動向にあわせ,福岡,北海道,名古屋に支社を開設した.また,朝日新聞との関係が強い大広は, 1961年に朝日新聞大阪本社管内の各県版広告取扱所を吸収統合した.その背景には,大阪朝日側が有力広告代理店の営業網拡大に対し営業拠点の強化の必要性を認識していたことがある.<BR> また,地方の有力広告会社との提携という形で全国ネットワークを構築する事例もみられる.ADKの前身である第一企画は全国サービス網を拡充するため,地方有力広告会社と連携し,1974年DIKパートナーズネットワーク(現ADKパートナーズネットワーク)を発足させた.<BR> 大手広告会社の事業所展開に大きな変化が見られるのは,1990年代以降である.この時期に,支社を分社化し地域広告会社を設立する動きが活発化した.地域子会社の設立は,地元の需要への即応,新たな広告主の掘り起こしなど地域への密着度を高めることを企図する一方で,地域別の賃金体系を採用することでコスト削減に結びつけるという経営的な理由もある.<BR> 2000年代に入ると,地域子会社の再編も進んだ.地域子会社の合併の背景には,管理機能を統合して経営コストを圧縮するとともに,経営規模を拡大することで子会社の経営基盤の強化を図ることがある.
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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