日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P022
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発表要旨
香港ジオパークとその世界ジオパークにおける特色に関する地理的考察
*遠藤 海斗
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抄録

香港におけるジオパーク設立までの背景,ジオパークの取組み,香港社会への影響等について調査を行い,香港ジオパークの可能性及び問題点の検討を行った.その結果より,日本のジオパーク,世界のジオパークとの比較検証を行い日本のジオパークが今後進むべき方向性について提言を行った.海外事例より,日本のジオパークについて考えることは,今後のジオパークの有り方を模索する日本のジオパークにとって,意義あることである.筆者は香港に2012年6月から11月まで滞在し,現地調査,文献・情報収集と聞き取り調査を行った.香港は市街地と自然公園までの距離が近く,これはイギリス植民地時代からの自然保護条例によって自然が保護されてきたからである.香港ジオパークは自然保護条例の流れを基に,自然保護への市民理解,香港の自然を市民に知らせる必要性を目的に香港ジオパークが設立された.香港ジオパークは計画の元,ジオトレイルと解説版の工夫,多言語対応,地質公園導賞員推薦制度,ジオパーク書籍,ジオパークホテル,ジオパークグルメ,広報,教育活動など多くの取組みが行われている.その影響として,教育活動が活発になったこと,地域活性化が見られた.一方で,交通問題,市街地にジオパーク案内施設が無い,ソフト面の弱さ,自然公園条例の問題点などが見られた.調査結果より,世界のジオパークをヨーロッパ型,中国型,日本型,香港型と分類しそれぞれの長所及び短所を述べた.香港ジオパークは都市からの距離,人口・観光客数の多さ,従来からの自然保護,象徴的な地形地質などの有利なポテンシャル,それを活かした戦略的な計画があると香港型は定義付けることができる.香港型ジオパークは付加価値都市型ジオパークとして,先行型事例になり,新しい都市観光の有り方の一考になる.一方で日本ジオパークは計画的戦略がなく,「看板ありき」の日本型ジオパークでは,中途半端であり,現状では,成果が出る以前に住民意欲減退の可能性がある.香港の例より,計画的にジオパークを展開する必要がある.そのことが,地域のやる気の維持,教育的な価値,地域の価値,ジオパークの価値を高めるものである.

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