本研究の目的は,栃木県さくら市(旧喜連川町)の丘陵地帯に開発されたフィオーレ喜連川とびゅうフォレスト喜連川の2か所の住宅地を事例に,定住化と高齢化の実態及びシニアタウン化が抱える諸問題を明らかにし,千葉県の事例と比較検討することにある。この2か所の住宅地は,1992年以降JR東日本と弘済建物(株)によって温泉付住宅地として開発・分譲されたものである。現在両住宅地とも,老年人口比が33%以上と超高齢でシニアタウン化が進んでおり,定住率は50%弱であることから別荘型住宅地と呼ぶこともできる。定住者は,主に1都3県と地元栃木県内から定年退職を機に,田舎暮らしをすることを目的にアメニティ移動をした住民が多く,彼らの購入・転入理由は,豊かな自然環境の中でゴルフやガーデニングなどの余暇が楽しめる温泉付き住宅地であったことである。住民は6割から7割がここを「終の住処」と考えているが,公共交通の便に恵まれず,買物や通院なども不便で,老後の不安も感じていることから,千葉県の事例と同様,超郊外の別荘型シニアタウンならではの課題が明らかになった。