主催: 公益社団法人 日本地理学会
2016年熊本地震では,熊本平野の熊本市,益城町,御船町等と,南阿蘇町,西原村等の阿蘇山周辺において,住宅やインフラなど地物に多くの被害が生じた。特に布田川断層や日奈久断層近傍では被害は甚大で,そこには地震断層が生じた。建物被害に関しては,益城町にて約2300棟の調査から建物の建築年代や地形から約50m区画別の倒壊率の傾向を分析したものがある。ただ地震断層は,細かく見ると並走する複数本が見られたり,分岐したり,雁行配列したりと様々である。斜面崩壊や側方流動による地盤変動により地震断層に似た亀裂も生じた。また益城町には段丘や火砕流台地の崖や盛土地など50m区画より小さな地形もある。つまり建物被害と地盤条件の関係を検討し記録するには,両者の観察スケールを近づける必要があろう。本研究では,建物被害の多かった益城町を対象に,被害と亀裂を現地調査で様々な項目別に記録し,両者の空間関係を明らかにした。