日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 718
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発表要旨
地理教育用AR(拡張現実)情報システム(6)
新たなシステムの活用とその特徴
*伊藤 悟鵜川 義弘齋藤 有季久島 裕
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抄録

AR(Augmented Reality;拡張現実)とは、目の前の事物に関わる追加情報を、モバイル機器を通じて提供する技術・概念である。そのうち位置に基づいて情報を付加する位置情報型ARを、地理教育等に応用することをテーマに、発表者らは2014年春以降、日本地理学会学術大会の場において同タイトルのもとシリーズで5件の発表を行い、さらに2016年春にはシンポジウム1)も開催した。それらに続く本発表では、この1年間の進展として、新たなARシステム利用の試みについて報告する。

従前、ドイツmetaio社(当時)提供のARシステムであるjunaioを利用してきたが2)、同社の大手IT企業による買収に伴いサービスが終了したため、新たなARシステムを開拓する取り組みの一つとして、オーストリア企業が開発・提供するWikitudeの活用を試みた。そのARブラウザはjunaio同様、フリーであり、目前の景観にタグを付加した画像を表示する。地図や航空写真上でのタグ表示も可能であり、タグを通じて当該事物の情報に接続する。junaioと比べて、機能面で不足がある一方で、自前のデータ・サーバ構築が不要なことや、Google Mapsの使用し、事物の位置を地図上で確かめながら、AR用データを容易に作成できるなどのメリットがある。

同システムの有用性を探るために、それを使ったフィールドワークの授業を福井県立武生高校において、前回3)と同様、観光コース作成を課題に実施した。ただし、前回は安全性や商業性、景観性を考慮したコース作成を求めたが、今回はバリアフリーに配慮するものとした。本授業の結果として、Wikitudeは移動しながらの使用には必ずしも適さないものの、高所などからの俯瞰には十分利用できること、また生徒自身によるGoogle Mapsへのデータ入力も組み合わせれば、生徒は地図と現実との両方で位置や分布を確認、照合することになるため、地理教育的な効果を高められる可能性があると評価された。

本報告は科学研究費補助金『地理・環境・防災教育においてGIS利用を拡大するAR搭載システムの開発と活用』(基盤研究B、代表:伊藤 悟)による成果の一部である。

1) 伊藤 悟ほか 2016.[シンポジウム報告] 地理教育での魅力的なGISの活用―AR(拡張現実)技術の導入―.E-journal GEO 11:320-324.
2) 伊藤 悟ほか 2014.地理教育用AR(拡張現実)情報システム(2).日本地理学会発表要旨集 85:224.
3) 久島 裕ほか 2016.教育におけるGIS/ARシステムの活用―福井県立武生高校における野外調査の授業実践―.日本地理学会発表要旨集 89:11.

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© 2017 公益社団法人 日本地理学会
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