日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P078
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発表要旨
金沢の心象風景が北陸新幹線開業後どう変わったか
訪問者のブログ記事を素材にした分析
*伊藤 悟掛上 麻衣
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抄録
2015年3月14日、北陸新幹線が長野から金沢まで延伸開業した後、金沢を含め北陸を観光や旅行で訪れる人が大幅に増加したなか、本発表は、金沢を訪れた人々の脳裏に金沢の姿がどのように刻まれたか―すなわち金沢の心象風景―について、新幹線開業前後の差異を検討する。

分析素材は、訪問者が事後に作成・公開したブログ記事である。開業前後の各1年間に関わるブログ記事を、「旅行」「旅」「観光」のいずれかと「金沢」をキーワードにネット検索し(その際、横浜市など他地域の金沢は除外するように設定)、それぞれ237件と263件収集した。さらに、それらの記事についてテキストマイニングを行い、開業前後のいずれかで10%以上の記事に出現する名詞の語句を、金沢の心象風景をあらわすものとして着目することとした。ちなみに、この条件に該当する語句数は270余りに達したため、それらを幾つかの範疇に分けて考察することとし、そのうち開業前後の差異が明瞭な場所と飲食に関わる語句について本発表では詳述する。

場所 金沢市内の地名や施設など場所に関わり、その位置が明確に特定できる13の語句について、出現率(%)の増減量を地図化したものが図1である。同図のように金沢駅に関連する語句の出現率増加が著しく、加えて近江町市場や金沢観光の定番ともいえる金沢城、兼六園、ひがし茶屋街も増加した。他方、香林坊や片町などでは出現率低下が集中する。場所による出現率増減の偏在が明瞭である。

飲食 飲食に関わる語句で先の条件に当てはまったものは27個であった。それらを新幹線開業後の出現率増加の大きいものから減少の大きいものへ順に並べたのが図2である。のどぐろやソフトクリーム(具体的には金箔ソフトクリームの場合が多い)、寿司、海鮮丼、回転ずしなどの出現率が増加した一方で、酒や料理、カフェなどの一般的な語句に加えて、加賀野菜や和菓子など金沢の伝統的な食べ物の出現率が相対的に減少している。

以上、北陸新幹線開業後に金沢を訪れた人々の心象風景は従前と比べて、特定の場所や飲食に偏る傾向がうかがわれた。発表当日は、場所や飲食関係以外の語句や、富山市と福井市についても同様の調査分析を行っているので、それらも交えて報告したい。
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