日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P003
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発表要旨
津波浸水予測データに基づく避難しやすさの定量的評価
地理的条件に基づくジオ・エバキュエイタビリティ指標を用いて
*田中 耕市駒木 伸比古貝沼 恵美
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抄録

I. 研究目的と背景 津波からの「避難しやすさ」の程度は,周囲の地理的条件(津波から逃れられる高い標高地点,避難路として活用される道路ネットワーク,緊急避難先として利用される中高層建築物の立地の有無など)に大きく依存する.本研究では,これらの地理的条件に基づく「避難しやすさ」を定量的に評価するジオ・エバキュエイタビリティ指標を用いて,南海トラフ地震による津波被害が予見されている四国地方沿岸部の「避難しやすさ」を評価する.その際に,内閣府「南海トラフの巨大地震モデル検討会」によって公表された津波浸水予測データに基づき,各地の津波高に応じた「避難しやすさ」を明らかにする.
Ⅱ. 指標の特性 GE指標は,ある一定の津波高を想定して,浸水するそれぞれの場所からみた「津波が浸水しない場所」までの要避難距離とする.「津波が浸水しない場所」には,津波高を上回る標高地点のみならず,最上階床面が津波高を上回る建築物を含める.  ただし,現実には全ての建築物に常時避難できるわけではないうえに,避難人数のキャパシティの問題がある.すなわち,津波高を上回る標高地点への避難が飽くまで第一に優先されるべきであり,建築物への避難は緊急避難的な第二の選択肢として考慮されるべきである.そのため,本稿ではある一定の津波高を想定したうえで①津波高を上回る標高地点への避難,②津波高を上回る標高地点あるいは建築物への避難,の2つのケースを考慮する.すなわち,後者は中高層建築物を避難場所として最大活用できた場合を意味する.

Ⅲ.ジオ・エバキュエイタビリティ指標の測定 ジオ・エバキュエイタビリティ指標の測定地点は,津波浸水予測データが整備されている50mメッシュ単位とした.同指標は津波浸水高よりも標高が高い場所あるいは建築物にまで到達できる移動距離に基づいて評価される.住民は避難時に道路を移動すると想定して,経路距離を測定した.主な空間データは,道路(デジタル道路地図),標高(基盤地図情報),建築物(ZMapTownII),人口(国勢調査)であり,いずれも全国一律に整備されている. 
Ⅳ.分析結果 「避難しやすさ」は津波浸水高だけではなく,各測定地点の周辺の地形条件や道路ネットワークによって差異がみられた.津波浸水高が低い地域でも,近隣に中高層建築物がみられない平野部では「避難しやすさ」は低下した.その一方で,津波浸水高が高い地域でも,標高が高い場所までのアクセシビリティが良いために「避難しやすさ」が高く評価された地域もみられた.

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