日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P050
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発表要旨
神奈川県東部における地下水の水質特性と涵養域
*小寺 浩二小山 優子浅見 和希
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抄録
Ⅰ はじめに
  都市化著しい神奈川県東部においては、既に現存する湧水の水量はかなり少なく、いつ枯渇してもおかしくない危機的状況であり、早急に調査を行わなければ、有効な保全対策が行えなくなる状況に陥ることが危惧される。そこで、神奈川県東部を中心に地下水の分布と地域特性、涵養域と土地利用や土質などの関連性などについて調査を行った結果を報告する。

Ⅱ 研究方法
   全域の調査は、豊水期・渇水期の2度実施し、現地調査項目はAT,WT,pH,RpH,EC等である。また、一部については、月1回の定点観測を1年間行った。採水したサンプルについて、研究室にてTOC, 主要溶存成分の分析を行った。

Ⅲ 結果と考察
1湧水量・温度・pHEC
   湧水量は、横浜・川崎においては僅かであり、山林や畑などの浸透率が高い土地を残す大楠山や円海山周辺、三浦半島については多めであった。降水後、直ちに湧水量が増加する。
   水温については、湧水らしい湧水に限定した場合でも、ほとんどの箇所においては、1℃程度の季節変化がみられた。変化の見られない箇所については、かなりの湧水量があった。
   定点調査pHにおいて、特に降水量が多い時期に変動が激しく、その変動は地域により似通った傾向があった。

2溶存成分
   硝酸イオンの含有量は明らかに土地利用に起因しており、山地を残す調査地においては低く、農地、特に畑地が多い地域においては高かった。都市化した地域において、局所的に農地が存在する箇所で最も高濃度であった。
   川崎、横浜西部においては、溶存成分が少なく、東部においては多いが、いずれも循環性の高いCa-HCO3型であった。
   三浦半島の衣笠・北武断層に沿う位置の湧水は、水質組成成分が全く違い、そのパターンもCa-HCO3型、Ca-SO4型、Na-Cl型などが点在した。三浦半島はその成り立ちが複雑であるゆえ、地質も複雑で、断層も多く、地下水の流れが複雑であると考えられる。
   円海山周辺においては、カルシウムイオン・硫酸イオン・炭酸水素イオンを大量に含有しているCa-SO4型である。メタン冷湧水を栄養源とした貝化石が見られる地域であり、特殊な地質が水質に起因しているのではないかと思われる。

Ⅳ おわりに
   神奈川県東部の地下水・湧水の現状の概略を把握できた。三浦半島を中心に、さらに涵養域の環境について詳細な調査を行ったうえで、水質の違いについて再考察を行いたい。

参 考 文 献
   西崎弘人(2009):神奈川県における湧水の分布・水質特性に関する地理学的研究, 法政大学卒業論文
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