日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 233
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発表要旨
コロンボ大都市圏における都市プロセスと将来の発展-地理空間技術を適用して-
*スバシンゲ シャヤマンダ 
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抄録
コロンボ大都市圏における都市プロセスと将来の発展-地理空間技術を適用して-

本研究は,スリランカにおける首位卓越都市であるコロンボを対象に,1990年代から現在までの都市域の空間的拡大とその形成要因を明らかにするとともに,将来の都市発展を予測し,持続可能な都市計画・都市政策に資することを目的としている.この課題を達成するために,都市地理学,GIS・リモートセンシング,土地変化科学の3つの学問分野を組み合わせ,都市化解析の新たな方法論を構築した.

まず,衛星画像を用いて1992年から2014年の12年間に土地利用がどのように変化したかを究明した.ランドサット衛星データにピクセルベースとオブジェクトベースを組み合わせたハイブリッド分類手法を適用して,市街地,非市街地,水面の3つの種目で土地利用パターンを導き出した.ここでは,ポテンシャル概念を導入し,各グリッドの土地利用を周辺環境(面積:1km2,半径:約564m)によって定義し,高密度市街地と低密度市街地に分けて空間可視化を行った.

さらに,1992-2001年と2001-2014年の土地利用推移行列を作成し,2時期における都市化の速度を定量的に把握した.その結果,1992-2001年より2001-2014年の方が土地利用の変化度が大きく,都市化が加速していることが明らかになった. 2000年以降,内戦が終結し首都コロンボの経済成長が著しいことがこの要因として指摘できる.高賃金を求めて,全国各地からコロンボへの人口流入が勢いを増している.政府が農村の貧困対策で農民の都市への移動を推奨したこともこの流れに拍車をかけた.  

ついで,都市成長の時空間パターンを定量的に分析した.グリッド毎の土地利用種目の分布パターンを景観メトリック指標により導出したところ,土地利用種目の分散化が進んでおり,特に郊外で土地利用種目の多様化が見られることがわかった.既存市街地にパッチ状に取り残された土地は市街化されていることも明らかになった.郊外では分散的都市化が進み,飛び地として市街化が形成されていることがわかった.また交通路に沿うリボン状発展も確認された.   

最後に,道路網,行政中心地,教育施設,成長センターなどの変数を投入し,CA-マルコフモデルとニューラルネットワークを用いて,2030年の土地利用を推定した.その結果,2014年に35,875haであった市街地綿製は2030年には53,510haに拡大することが見いだされた.コロンボ市東京が作成したマスタープランと比較してみると,より進展することが予想され,対策が必要なことが究明された.
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© 2017 公益社団法人 日本地理学会
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