抄録
1990年代以降、北半球中・高緯度を中心として冬季の気温が低下しており、この寒冷化が全球的気温上昇の停滞と関連していることが指摘されている。寒冷化の要因として、北極振動 (AO) との関連などが指摘されている。しかし、半球規模の気温変動と循環場の変動との関連に関する統計気候学的解析はほとんど行われていない。本研究では、米国海洋大気庁(NOAA)よる20世紀再解析データと、イースト・アングリア大学のClimatic Research Unit(CRU)による地上気温データHaDCRUT4を用いて、 気温場と循環場の変動の関連性について正準相関分析による解析を行った。 分析の結果、正準相関係数が高い順に、7つの正準相関パターンが得られた。このうち、第2正準相関パターン(CCA2)は、ユーラシア大陸、および北米大陸の気温変動と関連するCold Ocean Warm Land (COWL)パターンと対応している。また、第3正準相関パターン(CCA3)は、Ural Blockingの強弱と対応している。第2正準相関パターン(CCA2)のスコアは、2000年代以降、低下している。この結果は、負のCOWLパターンの強化に伴って、ユーラシア大陸と北米大陸で寒冷化が進行したことを示している。一方、第3正準相関パターン(CCA3)のスコアは1990年代中頃以降、低下しており、Ural Blockingの強化がユーラシア大陸での寒冷化と関連していることを示している。これらの結果から、近年の北半球中・高緯度における冬季寒冷化は、負のCOWLパターンの強化と、Ural Blockingの強化に起因する現象であると考えられる。