抄録
河口域や河川における地形の変化がアユ等魚類に与える影響を検討するために、アユ産卵数の多い河川の一つであり、1970年代前半に上流部にダムが建設された愛知川について、アユ産卵数の変化、河口域および河川の中下流部の地形変化を把握した。汀線の位置の変化、河口域面積の変化、中下流域の砂州の植生化などから、アユの産卵環境への影響が考えられたが、上流からの土砂移動の阻害が、産卵に関係する下流域の河床地形にすぐに影響を与えたわけではなく、10~20年程度の時間が経過してから影響が現れた可能性が考えられた。また、河口の河道幅の増大による流速低下がアユの遡上行動を阻害する可能性などの複合的要因がアユの産卵環境に影響していた可能性が考えられた。