日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S0203
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発表要旨
ユネスコプログラム化後のジオパークの状況
*渡辺 真人
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抄録

2015年11月に、ユネスコとIUGS(International Union of Geological Sciences)の共同プログラムであるIGCP (International Geoscience Programme)を拡充し、IGGP (International Geoscience and Geopark Programme)を設立することがユネスコ総会で承認された。GGN (Global Geoparks Network)がユネスコと協力しつつ普及してきた世界ジオパークは、これによりユネスコの正式事業として推進されることとなった。  このジオパークの正式プログラム化は、ユネスコ外部の団体が理念や仕組みを作り上げて活動をある程度世界各地に広げ、その上でユネスコの正式な事業となったという特徴を持つ。ジオパーク各地域の住民・行政・研究者・各種団体のこれまでの実践の価値がユネスコに認められて制度化した、ボトムアップ的な過程を経ている事業である。  ユネスコプログラム化の議論の中で,GGNが築き上げてきた仕組みの価値が各国代表に理解された。一種のpeer reviewによる再認定審査の仕組み、活発なネットワーク活動はジオパークが持つ大きな価値として高く評価された。その結果、これまでの審査の基準や仕組みはIGGPの設立に当たって大きく変わらなかった。認定の流れには変更があり、GGNは最終決定を行わず、ユネスコ内に置かれるジオパークの専門家をメンバーとするGeopark Councilの答申を経てユネスコ執行理事会で最終決定が行われることになった。専門家による決定が最終的に政治的にし覆ることがあるのかどうか、IGGP発足後最初の認定が承認される今年4月のユネスコ執行委員会が注目される。  ユネスコのプログラムとなったことで、ユネスコの目的である教育・科学・文化の振興を通じての国際交流による世界平和の実現、への貢献がUGG(ユネスコ世界ジオパーク)にはこれまで以上に求められるようになった。特に、まだジオパークのない国、特に発展途上国への支援がUGGに求められている。  日本においても、JGN(日本ジオパークネットワーク)傘下のUGGとUGGを目指す日本ジオパークのスタッフが中心となって、東南アジアでのジオパーク設立を支援する活動が昨年からはじまっている。これまですでに個別にジオパーク同士が国際的に交流を始めていたが、ユネスコプログラム化を契機に、ジオパークを通じた国際協力が動き出した。これまでJGNは活発なネットワーク活動を行ってきたが、それをさらに国際的なネットワーク活動へ広げようとしている。  これまでGGNと連携しつつも独自に国内で進めてきた日本ジオパークについては、ユネスコの正式プログラムであるUGGと同じ「ジオパーク」を名乗る以上、ユネスコ世界ジオパークと同じ理念に基づく活動が求められることになる。ちなみに、中国ではこれまでGGNのジオパークの理念とは少なくとも部分的に整合的でなかった「地質公園」について、GGNから改善を迫られ、急激な改革が進んでいる。  日本のジオパークは、これまで地球科学の研究者、地域住民、地方自治体が協働する新たな場を作ることにはある程度成功した。今後、その協働によりユネスコの理念に基づくどのような価値が作り出せるかが重要である。

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