抄録
本研究は,長春市都市中央部を取り上げ,GISを用いて大型商業施設の空間分布がどのような要因に規定されているかを解明することを目的とする.まず, 長春市商務局(2016)を参考に,長春市都市中央部における大型商業施設(5,000m2以上)をスーパー,百貨店,ショッピングモール,専門店,家具建材センターという5つに分類した.そして,GISを用いてカーネル密度分析と最近隣分析により,各商業施設の集積状況と空間パターンを考察した.各商業施設の立地特徴を把握した上, さらに, その規定要因を定量的に解明した. 具体的にはSPSSを用いて, 全体商業施設(Y1),スーパー(Y2), 百貨店(Y3), ショッピングモール(Y4), 専門店(Y5), 家具建材センター(Y6)のカーネル密度を従属変数にして, 人口密度(X1),地価(X2),バス密度(X3),都市電車駅までのユークリッド距離(X4),道路ノード(X5),近接度(X6),直線度(X7),連結度(X8)を独立変数とした重回帰分析を行った.カーネル密度と最近隣距離分析の結果は下記の通りである.①全体商業施設は集中型であり,その集中傾向は非常に強い. ②スーパーとショッピングモールは分散型である. スーパーとショッピングモールは, ライバル店舗との競争を回避することをより重視視すると考えられる. ③百貨店, 専門店, 家具建材センターは集中型である.これらの商業施設は, 消費者が複数の店舗を訪れる傾向があり, 同じタイプの店舗が近接することで利益を得ると考えられる.重回帰分析の結果は下記の通りである. ①Y1, Y2, Y3については, 決定係数が0.4以上, 1%水準で有意であり, 比較的に高い説明力を有している. 一方, Y5, Y6につては, 説明力が低い. ②スーパーに最も有意な影響を与えているのは人口密度である. スーパーは高頻度サービスを提供する小売業であるため, 一般的には人口が集積するところに立地する傾向があると考えられる. ③百貨店とショッピンモールに最も有意な影響を与えるのはバス密度と道路網である. 交通が発達した地域は顧客を誘致しやすく, 多くの収益性を見込めると考えられる.