日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P213
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発表要旨
南イニルチェック氷河における氷河上湖の日変動特性
*櫻井 尚輝奈良間 千之井上 公エセナマン モハメド
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抄録
近年,アジアの山岳地域においてデブリ氷河末端からの大規模出水が報告されている. 2008年5~7月のカラコルム山脈のグルキン氷河では,デブリ氷河の末端部から突発的かつ多量の出水が生じ,カラコルムハイウェイの通行止めや家屋流出の被害が報告されている(Richardson et al., 2009).2009年4月のブータン・ヒマラヤのチョゾ氷河のからの出水では,90km下流のプナカの町で混乱が生じた(Komori et al., 2012).このようなデブリ氷河から出水の事例では,巨大な氷河湖は確認されておらず,デブリ氷河の氷河上湖や氷河内部あるいは底部に発達した氷河内水路に貯まった水が突然出水したと考えられている.デブリ氷河に発達する氷河上湖については,その面積が季節変動すること(Benn et al., 2017;Narama et al., 2017),氷河上湖の発達が氷河の表面傾斜や流動に関係すること(Reynolds,2001; Liu et al., 2015; Miles et al., 2016),氷河上湖の発達が氷河の質量収支の状態と関係すること(Benn et al., 2012)などが明らかになってきている.さらに,ネパール中央部のランタン谷のリルン氷河では,ドローンによる空撮画像の解析から,氷河内水路の立地も推定されている(Miles et al., 2017).最近数年間で氷河上湖の新知見が報告されているが,氷河上湖や氷河内水路の出水過程をLandsatなどの衛星画像から解析するには情報量が限られており,詳細な水の移動を解明するまでには至っていない.氷河上湖の出水に関連して引き起されてきた被害を未然に防ぐためにも氷河上湖の理解は不可欠である.そこで本研究では,南イニルチェック氷河において,毎日実施したドローン空撮で取得されたデジタル画像とSfM技術により,20㎝分解能のオルソ画像とDSMを作成し,氷河上湖の湖面変動を調べた.さらに,氷河上湖の発達と氷河内水路・氷河上水路の関係性についても検討した.
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