日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S303
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発表要旨
国土調査法に基づく「土地分類基本調査」としての地形分類図について
*渡部 元
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抄録
1..国土調査「土地分類調査」とは

 国土交通本省・国土政策局では、昭和27年以来、約60年以上に亘り、国土調査法に基づく国土調査事業として、「土地分類基本調査」を実施してきており、様々な種類の地形分類図はその成果物群の1つとなっている。

 具体的には、国土全域をカバーする1/20万地形分類図と、概ね8割程度が概成している1/5万地形分類図、「土地保全調査」による土地分類図、そして現在手がけている「土地履歴調査」による自然地形分類図、人工地形分類図等があり、これらは国交省HPや「地理院地図」サイト等を通じて、広くインターネットで提供してきている。



 国土調査事業は、国土調査法により、「土地分類」「水」「地籍」の3カテゴリについて、特別措置法に基づく十箇年計画に基づき10年間の目標を定めて実施してきており、現在は平成22年度から31年度までの10年間事業として、三大都市圏と全国の人口30万人以上の県庁所在地のDID地区について、自然地形・人工地形図と災害履歴図、それらの解説集等を整備する「土地履歴調査」等を実施中である。(他には「地下水の見える化調査」等)



2.国土調査の特徴(ねらい)

 「国土調査」の特徴は、①原則として全国津々浦々を同一の基準で整備すること、②基準や手法・凡例の選定にあたっては科学的・総合的な観点で行うこと、③国は小縮尺の調査を先行し順次パイロット調査を経て、準則等として公布する(基本調査)、④その後に、作業規程準則等を基に本調査(細部調査)として地公体や土地改良区など地域に密着した主体の取組を促す段取りであること、などである。



3.具体的な手順(何をソースにし、どうするのか)

 実施の手順としては、まず調査に先立って事前に調査の方法・項目・手法等を定め、先地やその分量(面積)については国土調査促進特別措置法による「国土調査促進十箇年計画」に則り、対象地区・面積等を設定後、毎年度初頭、官報に告示の上、事業実施している。

 また、図簿の作成に当たっては、国土地理院発行の小中縮尺の国土基本図を基図とし、同院の「土地条件図」「沿岸海域土地条件図」「治水地形分類図」、産業技術総合研究所等の各種地質図、各都道府県による測量成果、学会・大学・研究機関により編纂された研究成果等、根拠の明らかな資料を参照し、編纂・調製・解説している。

 実施にあたっては、企画調整委員会の委員を含む各方面の学識者・実務者、当該地方公共団体、利活用関係者から成る現地作業委員会(ワーキンググループ)を設置し、科学的・客観的・総合的な見地からの検討を行い、時系列的・空間的整合性を担保しつつ作成している。

 近年は、「土地履歴調査」の一環として、関係自治体職員等を対象とした「成果利活用資料集」を作成するとともに、関係者向けの「利活用説明会」を現地で開催し、防災現在面や学校教育、地方創生などの面での速やかな利活用を促しているところである。



4.凡例や判読基準などについての補足

 凡例や判読基準の決定経緯を振り返ると、国土調査法で示された「国土の利用の高度化・保全・開発」の目的に則り、「地形」「表層地質」「土壌」の3要素を基本とし、それぞれの学問的成果に基づき、「地形」については、地形学の教科書に準拠し「山地丘陵地」「台地」「低地」の3分類を基本としつつ、開発や保全、防災などの人間の土地利用の可能性からの分類(=「土地分類」の概念を中心に据えて細分化したものを判断基準としており、利活用側の要請に沿った利用者(視点)からの分類と言うことができる。



 手続きとしては、分類項目とその定義等について、関係政府機関、関連学会等からの学識者、実務者等からなる検討委員会を設置し、国土調査法の規定に基づき官報公告の上、一定期間の閲覧に附し、その後、政令として決定され、官報公示されてきているところ。

 現在も、土地分類基本調査の土地履歴調査の一環として、学識者からなる「企画調整委員会」を設置し、そこで判読の基準あわせ等について、現在的な見直しなど科学的・総合的な検討を行っていただいている。



5.今後のみとおし

 今後とも、歳々変動する利活用側の要請や、原典資料どうしの資料の摺り合わせ・平仄合わせの観点から、政府や地方公共団体の関係各機関、大学・研究機関等の学識・有識者の皆様のご指導・ご助力を得て、より多くの・より多様な利用者の期待に叶うよう、着実な整備を図ってまいりたい。



参考:

■国土調査(土地分類基本調査・水基本調査等)サイト

 http://nrb-www.mlit.go.jp/kokjo/
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© 2018 公益社団法人 日本地理学会
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