日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 637
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発表要旨
住民の歩行行動および健康状況と近隣住環境に関するアンケート調査についての報告
*山田 育穂眞田 佳市郎
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抄録
地域空間の歩きやすさを表すウォーカビリティ(walkability)という概念は、肥満や生活習慣病など深刻な健康問題に直面する欧米諸国で1990年代に登場したものである。ウォーカブルな地域環境は住民の徒歩移動を促進して日常生活における身体活動量を増加させ、住民の健康維持・促進に繋がるという仮説に基づき、地域のウォーカビリティと住民の健康・身体活動量との関連性を扱う様々な研究が行われている。歩行の健康効果は超高齢社会を迎えた我が国においても関心が高く、またコンパクトなまちづくりとも関連が深いことから、日本国内を対象とした研究も徐々に増加している。

ウォーカビリティ研究では、特定の地域に関して都市空間の物理的な歩きやすさを示す指標と、肥満状態や身体活動量など住民の健康指標との関連性を、地理情報システム(GIS)や統計的手法を用いて解析するという手法が多く用いられている。研究の数が増加している一方で、対象とする地域が多様なため研究間で一貫性のある知見が得られにくい、統一的な歩きやすさの指標が確立されていない、横断的研究が主流で因果関係に関する知見が限られている、等の問題点も指摘されている。さらに、個人の健康状態に関する情報取得の難しさも相まって、限られた地域・被験者数で現地調査等によりミクロな関係性を扱う研究と、広範な地域を対象に政府統計をはじめとしたマクロな指標を活用した研究とに、研究手法が二極化する傾向も見られる。

本研究では、東京都のほぼ全域を対象とする大規模なアンケート調査を実施し、さまざまな都市空間に住む住民の近隣住環境についての評価や、歩行行動・健康状態について包括的な調査を行うことで、上述の第1の問題点の緩和を目指す。そしてその結果を、地域の建造物環境に関する空間データなどから客観的に算出する歩きやすさの指標と照らし合わせて、都市部対郊外部など地域特性を考慮しながら、両者の関係性についての解析を行う。今回の発表では、2018年1月に実施予定のアンケート調査について報告する。
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© 2018 公益社団法人 日本地理学会
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