日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P033
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発表要旨
草津白根山における推定小火口群の発見とその意義
高精度標高データの活用
*研川 英征関口 辰夫倉田 憲吉田 一希長野 玄
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抄録

1.はじめに
草津白根山では,平成30年1月23日の本白根山の鏡池付近における噴火により,災害が発生した.
国土地理院は,草津白根山の赤色立体地図等を作成し,火山活動に関する情報提供を国土地理院ウェブサイトから行った.
筆者らは,赤色立体地図等による判読により,過去に噴火記録のない火口と推定される地形群(以後,推定小火口とする)を発見したことから,1月23日に形成された新期の噴火口に関する判読結果と合わせて推定火口位置の分布図を作成し,国土地理院ウェブサイトより公開した.

2.調査方法について
航空レーザ測量データ(平成27年度に計測)から作成した1mメッシュ標高データを基に赤色立体地図を作成した.
国土地理院による1月27日撮影の航空機SAR画像(以後,SAR画像とする)及び1970年代撮影のカラー空中写真(以後,空中写真とする)を使用した.
1月23日に形成されたと考えられる噴火口については,SAR画像・赤色立体地図・空中写真の判読により抽出後,火山噴火予知連絡会資料の火口位置に関する記載とおおむね一致することを確認した.
推定小火口群の判読は,次の通り行った.
まず,赤色立体地図上で火口状の地形を判読・抽出した.次に,空中写真を判読して火口の推定(明瞭または不明瞭)を行った.抽出する火口状の地形は,直径10m以上かつ,おおむね50mまでのものとした.
判読の基準として,円形または楕円形の深い凹地を呈し,噴火以外の可能性が考えられないものを「明瞭」とし,凹地の周囲に侵食や堆積により崩壊地やガリーなどがみられるものや,人工的な地形である可能性が考えられるものを「不明瞭」とした.

3.判読結果とその意義
本調査により明らかとなった推定小火口群の多くは,その立地や形状から,既知の噴火による地形の形成以後に生じている.
とくに本白根山では,最新の噴火活動は1500年前とされていることから,推定小火口群の形成は少なくとも過去1500年間のものと推測される.推定小火口群の大きさは1月23日の噴火による噴火口の規模と同程度であった.
また、解像度が1mに達する高精度な標高データの整備が進んだことで,これまで捉えることが難しかった小規模な地形,つまり1月23日の噴火によるものと同程度の火口の判読が容易になり,過去の噴火について新しい情報を得られることが確認できた.
本調査では,SAR画像(噴火直後)と,赤色立体地図(噴火前)の判読により,1月23日の噴火による地形変化の詳細な比較が可能となった.
標高データの精度向上による効果は,過去の噴火履歴に関する調査だけでなく,今後の噴火時における,地形の前後比較などにおいても精度向上に繋がる可能性が十分に確認された.

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