日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P041
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発表要旨
南極地域観測隊空中写真を用いた高解像度数値地形モデルの作成
*川又 基人菅沼 悠介土井 浩一郎澤柿 教伸
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抄録

近年では, 航空レーザー測量を基にした高解像度の数値標高モデル(Digital Elevation Model: DEM)により微地形の特徴の抽出が容易になり,これまで以上に詳細な地形判読が可能となってきた。しかし,南極などの人為的アクセスが極めて厳しい地域では, 日本国内で用いられているような航空レーザー測量は難しく,衛星データによって得られるDEMは解像度約30−10 m程度のものである。このようなDEMは数kmスケールの地形は判読可能だが,それよりも小ス ケールの判読は難しい。
 そこで本研究では,微細な氷河地形の判読を目的に,SfM 多視点ステレオ写真測量(SfM/MVS)技術を南極地域観測隊によって撮影された空中写真に適用することで,高解像度のDEM およびオルソ画像を作成した。 SfM/MVS処理の結果,1.4 m メッシュの DEM と地上画素寸法 70 cm のオルソ画像 の作成に成功した。新たに作成したDEMは,国土地理院作成の既存DEMで確認された急傾斜地点でのデータの抜けなども確認されず,詳細な起伏が表現されている。新たに作成したDEMの精度に関して,現地でのGNSS測量結果4点との較差(平均平方二乗誤差)を調べた結果,高さ方向に2.77 mとなった。しかし,今回作成したDEMの端では海水面に±10 m 程度の誤差が確認された。これは SfM/MVSに特徴的なドーム状の歪みに起因するものと考えられる。
 今後は海岸線での高さの整合性の取り方といった絶対精度向上のための工夫する必要があるものの,今回作成したDEMは既存のDEM からは判読できなかった解像度 (数 10 m スケール)の氷河地形を読み取ることができ,地形判読や地形解析をはじめ,極域における地形発達史に関する教育・アウトリーチ面でも有効に活用できるだろう。

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© 2019 公益社団法人 日本地理学会
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