氷と岩屑が入り混じる堆積地形である岩石氷河は,その内部に永久凍土が存在しており,山岳永久凍土の指標地形となっている.岩石氷河の厚い岩屑の内部に永久凍土が存在する場合,塑性変形によって流動が起こるため,流動の確認によって山岳永久凍土の存在の可能性を示すことができる.飛驒山脈の高山帯では,永久凍土の存在条件である“地温が2年以上 0℃以下”の条件を満たす山域があることから,山岳永久凍土が分布する可能が指摘されている.その代表例として,白馬岳周辺や槍穂高連峰の岩石氷河が挙げられる(Matsuoka and Ikeda,1998;青山,2002;Ishikawa et al.,2003).しかしながら,現在,飛驒山脈において現成の山岳永久凍土は立山の内蔵助カールでしか確認されておらず(福井・岩田,2000),中部山岳における山岳永久凍土の分布の全貌やその形成・維持環境は明らかでない.本研究では,山岳永久凍土の分布可能性が指摘されている飛驒山脈の杓子岳北カールの岩石氷河において,山岳永久凍土の分布可能性について考察した.