日本地理学会発表要旨集
2023年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S207
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自然災害伝承碑の取組と利活用
*門脇 利広
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抄録

1. 自然災害伝承碑の取組

自然災害伝承碑は,過去に発生した自然災害に関する事柄が記載されている石碑やモニュメントであることから,災害当時の様相や状況を知ることが出来る貴重な資料である.また,自然災害は同じ場所で繰り返し発生しやすい性質があることから,自然災害伝承碑を見ることは,その地域の災害に帯する危険性を知るきっかけにもなる.そこで,国土地理院では,市区町村等と連携して自然災害伝承碑の情報整備を進めており,2019年6月より国土地理院のウェブ地図「地理院地図」(https://maps.gsi.go.jp/)に掲載を開始し,月1回程度の追加公開を実施している.

また,2020年8月には地理院地図に掲載されている情報を自然災害伝承碑データとして国土地理院のウェブページ(https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/denshouhi_datainfo.html)からダウンロード提供も開始したり,2021年11月から「ハザードマップポータルサイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/)での掲載も開始したりするなどの取組を実施している.2022年12月8日現在,関東大震災に関する石碑等も含め,全国509市区町村1,736基を公開している.

2. 自然災害伝承碑の利活用

 自然災害伝承碑は,地理院地図に掲載している各種地図情報等と容易に重ね合わせることにより,地域の過去の災害と地理的環境について理解を進めることが出来る.例えば,色別標高図や地形分類情報を重ねると過去の災害と地形や土地条件の関係を知ることに役立つ.

一方,ダウンロード提供されている自然災害伝承碑データを用いて,災害名や建立年での検索や並べ替えなどを行うことにより,過去の災害の様々な状況を把握することが可能になる.災害名に着目して,関東大震災に関する自然災害伝承碑を抽出し,建立年と合わせて時系列分布のグラフ化をおこなうことが出来る.

また,地理院地図上に展開すると,東京や神奈川だけでなく伊豆半島や房総半島のほか内陸の山梨県や埼玉県まで広域に分布していることが分かる.

地域での活用事例については,自然災害伝承碑のサイト(https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/denshouhi.html)から確認出来る.

3. まとめ

自然災害伝承碑は、地理院地図等での確認やデータでの活用により,地域の災害教訓の伝承や防災・地理教育にも役立てられるものである.引き続き,自然災害伝承碑の追加公開の取組や利活用のための支援を進めたい.

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