主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2023年度日本地理学会春季学術大会
開催日: 2023/03/25 - 2023/03/27
測量の分野でLiDAR(ライダー)というと,航空機LiDARが有名で,国土地理院が整備している数値標高モデル(DEM)はこの測量成果に基づき整備されているものが多い。一般にLiDARを用いた測量を行うためには,数百~数千万円する計測機器が必要で,その敷居は高い。一方で近年,自動車などの自動運転技術の発展に合わせ,ロボットの目として低価格帯のLiDARが登場してきた。さらに,センサーをもって移動すると同時に3D(三次元)のマッピング・測量もできるデータ処理技術であるSLAM(スラム)も進化している。これらの技術を組み合わせ,あとは“やろう”という気概さえあればLiDARを用いた3Dマッピングが可能になっている。そこで本発表では,筆者らが作成した簡易型3Dマッピングシステムと実際の計測事例を紹介する。計測システム全体は20万円弱で,そのうち16万円 はLiDAR本体(Livox社Avia)が占める。現場では,この計測システムを持って歩くだけで,野外屋内問わずに3Dマッピングができる。感覚としては現地をスキャンするイメージで,現地の事物を3Dの点群データとしてデジタル化して記録しておくことができる。あとは,この3Dの点群データから色々なデータ(例えば,建物の大きさ,地形の高低差,樹木の太さ・高さなど)を抽出することができる。これを少ない時間のフィールドワークで,すべて計測できる。なお,筆者の研究室のホームページでは,LiDARを用いた計測システムの導入に関する資料を公開している。千葉県房総半島南部の見物海岸では,現地での調査時間は10分程度で,元禄地震および大正地震に関連した海岸段丘をマッピングできた。また,本システムの強みを生かすことができるものの一つが洞窟である。山口県秋芳洞では,洞窟の天井などの人が近づくのが困難な場所もマッピングできた。 鳥取砂丘に位置する砂の美術館は,屋内での計測事例で,当日は観光客がいたが,問題なく数メートルの大きさの砂像をマッピングすることができた。