日本地理学会発表要旨集
2023年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P064
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江戸時代後期の天気記録による日本の北方の気候復元
*田上 善夫デマレー ガストン
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抄録

1 はじめに 18世紀末頃から北海道以北の地における天候記録が遺される。外国艦船による器械観測により、気圧、気温や風などの記録も得られる。それらを除くと多くの場合は、探検紀行に伴うものである。そのため記録は断片的、かつ天候の記述にとどまることが多い。  記録は長期の定点観測ではないことから、これを気温や降水量の長期的変動に変換することは困難である。そのため、天候を直接分析する方法が求められる。  この日本の北方には、さまざまな天候変化の地域が存在する。本論ではまず、現在の天候の季節的変化について明らかにする。次に入手できた古い天候史料について、現在の当該地域の天候と比較する。さらにそれにもとづいて、当時の気候の復元を試みる。

2 天候型の地域的差異 現在の天候について、気象庁の「世界気象ファイル時日別値1995年」を使用する、その地点別に1日4回の記録から、現在天気および全雲量を抽出する。対象地域は、北緯40°以北、東経125°~西経165°の範囲とした。得られるデータは、96地点のものである。 国際的な現在天気は、00-99の100種で記される。これらについて、類似や希少の程度に応じて、12種類に集約した。さらに現在天気の記されない時刻について、全雲量から0-1を快晴、2-8を晴、9-10を曇りとし、15の天気とした。前記の解析対象地点について、春(3-5月)、夏(6-8月)、秋(9-11月)、冬(1,11-12月)について集計した。 さらに各地点について、上記の15天候×4季節を対象として、クラスター分析法を適用した。結合方法として可変法を用いた。大分類として4種、さらにその下位区分として11種に分類した。

3 天気出現の特色 北東アジアでは、天気出現型の年変化、およびさらにそれらの分布地域には特色がある。大陸地域では、快晴および晴天がきわめて多い。日本海北部地域では、さまざまな天候の出現地域が入り乱れて存在する(図1、図2)。  さらに9月についてみると、オホーツク海周辺地域では天候出現の特色は以下である。A型:オホーツク海北側、ベーリング海に分布し、晴が多い。B型:オホーツク海東側、南側に分布し、霧が多い。C型:オホーツク海西側、北海道に分布し、雨天が多い。D型:樺太、大陸側に分布し、快晴が非常に多い。

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