日本地理学会発表要旨集
2023年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 216
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久米島ハテノハマにおける空中写真・衛星画像を用いた基底地形の復元
*田中 圭濱 侃長谷川 均菅 浩伸
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抄録

Ⅰ.はじめに

 サンゴ洲島は,サンゴ砂礫や有孔虫の死骸が波によって浅海底に運搬,堆積してできた島であり,浅海域の生態系においても重要な役割を果たしているが,現成の地形の中でも大きな変化を繰り返している場所でもある.日本最大のサンゴ洲島である久米島ハテノハマは,波浪による営力で絶えず地形が変化している(長谷川 1990).大きな地形変化が繰り返される中でもサンゴ洲島が存在し続けており,サンゴ砂礫などが堆積する場所にはビーチロックや礁礫の分布といった基底地形および周辺の浅海地形と密接に関係していると推察できる.サンゴ礁周辺の洲島や砂浜の形成と基底地形または浅海地形の関係を明らかにすることは,今後の気候変動に代表される環境変化の影響を評価するうえでも基礎的かつ必要不可欠な情報の1つといえる. 本研究では多時期の空中写真・衛星画像を用いて地形変化の過程で一時的に基底地形が出現している場所を抽出し,それらを組み合わせることでハテノハマにおけるサンゴ洲島全体の基底地形の可視化を試みた.本研究で示した手法によって,堆積物に覆われているサンゴ洲島の基盤がどのような地形を形成しているのかを明らかにすることができた.

Ⅱ.解析方法

 入手したハテノハマ周辺の空中写真は1945年の米軍空中写真(沖縄県立公文書館所蔵)が最古であり,その後,1962年に米軍,1970年に琉球政府がそれぞれ撮影し,沖縄返還後は国土地理院が定期的(1974年,1978年,1984年,1991年,1994年,2003年)に撮影した8時期の写真である.また2003年以降は国土地理院による空中写真の撮影が行われていないため,Google Earthの衛星画像を3時期(2009年,2012年,2018年)用いた.これらの空中写真は,SfM-MVS技術による写真測量でオルソ空中写真を作成し,衛星画像はオルソ空中写真を画像基準点として幾何補正を行った. サンゴ砂礫に覆われている基底地形の可視化を行うために,これらの画像からサンゴ洲島に堆積しているサンゴ砂礫の範囲を画像ごとに選定した.GIS上でレイヤ重畳する際に選定した範囲を透過させることで,堆積物に埋没している基底地形が表示されるようにした.この作業を全てのオルソ空中写真および幾何補正した衛星画像に行い,基底地形を復元した(図1).海域部分は波浪による波や太陽によるハレーションによってノイズとなっていることもあるため,これらの影響のない画像を組み合わせて,鮮明な浅海域の画像を作成した.なお,色調はモノクロで撮影された空中写真が含まれるため,モノクロに統一して扱った.

Ⅲ.基底地形

 基底地形の可視化によって,ハテノハマ(ハテハマ,ナカバマ,タカバマ,マエハマ)の基盤が明らかになった.ハテハマは東西に延びる長さ約1.2km,幅約200mの離水礁の高まりの上に洲島が形成されている.この離水礁に固定されるだけの堆積量はなく,波浪によって活発に変動し,時期によってハテハマの洲島自体が消失することもある. ナカバマはハテハマからつながる離水礁,ナカバマ東部のビーチロック,沖合からタカバマにつながる離水礁の3つの形態から洲島が成り立っていることがわかった.特にナカバマ東部の洲島直下に存在する複数列のビーチロックは,基底に離水サンゴ礁がない場所でサンゴ洲島が発達するために重要な役割を果たしたと考えられる。 西側に位置するタカバマとマエハマは,ナカバマから繋がる離水礁と南東から西南西に円弧状に延びる離水礁の上に形成されていることがわかった.

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