日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会春季学術大会
セッションID: 813
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磐梯山南西麓に分布する流れ山地形の形成要因
*古庄 航輝小荒井 衛
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抄録

はじめに 磐梯山南西麓には南北約5km,東西約10kmにわたって流れ山地形が分布している.この地域の流れ山地形について,給源山体近傍に全体の傾向から外れる小型の流れ山が存在することが指摘されてきた(三村,1988;吉田,2013).また,本地域には複数の岩屑なだれ堆積物が報告されている(下位から翁島岩屑なだれ堆積物(以下,OkDAD),磐根岩屑なだれ堆積物(IwDAD),古観音岩屑なだれ堆積物(FkDAD);千葉・木村,2001).これらのことは,本地域の流れ山地形が複数回のイベントによって形成されたことを示唆する.本研究では,流れ山地形をサイズの縦断分布特性に応じて分類し,岩石学的手法を用いて岩屑なだれ堆積物と対比することで,その形成要因を検討した.研究手法・結果 <地形判読・解析> 5mDEMを用いて作成したCS立体図から流れ山地形を判読し,そのサイズ(底面積,長径,短径)と給源からの距離との関係を調査した.結果として,磐梯山南西麓に分布する流れ山地形の縦断分布特性は,大半が一様な傾向を示し,翁島岩屑なだれによる形成で説明可能だが,給源からの距離7000m以内の流れ山はその傾向から外れて小型であり,さらに,より小さい流れ山グループ(Sグループ)と比較的大きい流れ山グループ(Mグループ)に分類可能であった.<岩石記載・化学組成分析>岩屑なだれ堆積物中の岩石と流れ山地形を構成する岩石との対比を目的とし,薄片観察と化学組成分析を行った.その結果,本地域に分布する岩屑なだれ堆積物3層は,TiO-SiO₂図において異なる組成領域を示した.各流れ山グループと比較するとMグループとIwDADの組成領域が一致し,SグループはIwDADやFkDADとは一致せず,OkDAD(7000m以遠の流れ山)の組成領域に包括された.各流れ山グループの形成要因 Mグループは,翁島岩屑なだれによる流れ山地形の縦断分布特性から外れて小型であり,岩石学的特徴や分布域がIwDADと一致することから,磐根岩屑なだれによって形成されたと考えられる.一方,Sグループは,Mグループと比較してもさらに小型であるが,岩石学的特徴はIwDADやFkDADとは一致せず,OkDAD(7000m以遠の流れ山)の組成領域に包括される.千葉・木村(2001)は,翁島岩屑なだれによって形成された馬蹄形カルデラが再崩壊したことによる小規模な岩屑なだれ堆積物を報告している.この堆積物の確認されている地点はSグループの分布域とおおよそ一致しており,馬蹄形カルデラの再崩壊とそれに伴う小規模な岩屑なだれがSグループの形成要因であると考えられる.文献:千葉・木村 2001,岩石鉱物科学 30,126-156.三村弘二 1988,地学雑誌 97,37-42.吉田英嗣 2013,地形,34,1-19.

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