日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会春季学術大会
セッションID: P001
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根室半島におけるアースハンモックの分布と形態
*澤田 結基近藤 玲介吉岡 璃貴也
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抄録

はじめに北海道東部の根室半島には,土壌の凍結融解で形成されるアースハンモック(周氷河ハンモック)が分布することが知られている。これらのアースハンモックは湿原よりは地下水位が深い場所に分布し,地下水位の深さに応じて密集型から散在型へ移行すること(天井澤,1997),地下水位に応じて谷地坊主と分布範囲を異にすることが明らかにされてきた(Ogata, 2007)。しかし,その分布範囲は不明であった。本研究では,根室半島全域のアースハンモックの分布を把握し,その微地形の特徴を明らかにすることを目的とする。 調査の概要アースハンモックの分布調査には,主にGoogle Earth Proの衛星画像を用いた。解像度が高く雲の影響がない画像を選択し,分布地と判断される領域を囲むポリゴンを作成した後,KMLファイルに出力した。判読が困難な場合には,地理院地図の空中写真も援用した。なお判読は湿原と草地を対象としており,森林下にあるハンモックは判読の対象としていない。この判読結果から,調査地を3か所(納沙布岬近傍,珸瑤瑁(ごようまい),歯舞)抽出し,現地調査を行った。現地調査では,おおむね10×10m以上の範囲でSfM測量を行い,2cm解像度のDEMを作成した。SfM測量のGCPではDGPSによるRTK測量によって緯度・軽度・標高の値を取得し, Metashape Proを用いた地形モデル作成に用いた。 アースハンモックの分布 アースハンモックは,複数面の海成段丘からなる台地上,あるいは段丘崖の緩斜面に分布する(図1)。特に半島先端部の歯舞地区から納沙布岬にかけて分布が集中するが,根室市街南部にも分布地が点在する。湿原周縁部に分布するものは小型で,谷地坊主と分布地が隣接,あるいは谷地坊主と混在することがある。ア-スハンモックの分布地は概ねササ類に覆われるが,牧草地にも多く分布している。 アースハンモックの形態 歯舞の分布地は湿原外周部の谷地坊主分布地と隣接している。谷地坊主分布地の近傍ではやや密に分布するが,そこから離れるにしたがって散在傾向を示す。ハンモックの直径は約50cm-100cm程度,高さは約20-30cmと小型であり,釣鐘上の形状を呈する。ハンモック分布地は全域がササ類に覆われている。納沙布岬近傍の調査地は歯舞に似ており,小型のハンモックが点在する。珸瑤瑁には大型のハンモックが分布する。直径は約1-2m,高さは約30-40cmで,頂部が平坦なテーブル形状を呈する。平面形は楕円で,その長軸は南北に配列する傾向を示す。歯舞と同様,全域がササ類に覆われるが,その根茎がハンモックの基部で断裂しており,現在も凍上が生じていると考えられる。 歯舞,珸瑤瑁,納沙布のどの分布地においても,ハンモックの一部が直線的に欠けるものが散見される。ハンモックの欠損はエゾシカの踏み跡に沿っていることから,エゾシカが踏みつけることで生じたと考えられる。

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