日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会春季学術大会
セッションID: P037
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横須賀市を流れる平作川の水質に関する水文地理学的研究(1)
*三浦 エリカ小寺 浩二植 遥一朗
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抄録

Ⅰ はじめに

 日本では1971年に水質汚濁防止法が施行されて以降、河川の水質は急速に改善された。都市河川での事例では、横須賀市を流れる岩戸川で水質汚濁が進み、生息していたホタルが絶滅したが、改修工事により水質が改善され、ホタルなど水生生物の回復が実現されたと述べられている(水系環境を考える会 1989)。しかし流域全体の水質特性については明らかになっていないため、本研究では平作川を対象に水環境の特徴を把握することを目的とした。

Ⅱ 研究方法

2023年8月から毎月、定点22地点の河川水を中心に現地で気温、水温、電気伝導度(EC)、pH、RpH、COD、流量を観測した。また、イオンクロマトグラフによる主要溶存成分およびTOCの分析を行った。

Ⅲ 結果・考察

 ECは、塩水遡上が確認できた7地点を除き、本流では400-500μS/cm、一方、支流では600-700μS/cmと高い値を観測した(図1)。pHは、8.7以上の地点が多く、アルカリ性を示している(図2)。また、変動係数は、0.01~0.05で、pHの最高値は8月と9月に多く検出された。RpHは、8.2以上の地点が多く、変動係数は、0.01~0.04であった。最高値はpHと同様8月と9月に多く検出された。RpH-pHでは、0.0または0.2が多かった。水質特性においては、Ca-HCO₃とCa-SO₄型の境界付近に分類され、地質的要因を反映しており、前者では日本の河川の大部分が属している。またCa²⁺の値が高く検出された地点では、宅地が広がっており、HCO₃⁻の値が高く検出された地点では、宅地以外にも農作地や高速道路が広がっている。

Ⅳ おわりに

 平作川の支流では、本流よりも比較的ECの値が高く、かつ水質特性においてもCa²⁺やHCO₃⁻が多く検出されている。しかし、横須賀市の下水道整備率はほぼ100%に近いため、特に宅地周辺と高速道路付近でのECの値が高い要因について、今後も継続した調査が必要である。

参考文献

水系環境を考える会(1989):都市河川の再生-横須賀市岩戸川-,横須賀市博物館研究報告(自然科学), 9-28.

山形えり奈・小寺浩二(2023):阿武隈川流域の流域特性と河川水質-1年間の調査をもとにした水質形成要因の推察-,陸水物理学会誌,5(1), 3-15.

原久雄(1988):横須賀市秋谷の河川水・地下水の水質調査,化学と教育,36(1),98-99.

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