主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2025年日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2025/09/20 - 2025/09/22
本研究は、漁港に隣接して発達した商店街を全国的に抽出・分析し、「漁港近隣商店街」という新たな類型を提案することを目的とする。少子高齢化や商業環境の変化に伴い、多くの地方商店街が衰退するなか、漁港の盛衰が商店街の発展過程とどのように関係してきたかを検討した。2022年度の年間取扱高が10億円以上の主要漁港28か所を対象とし、地形図・空中写真・ウェブ地図等を用いて港周辺の商店街を抽出し、開店・閉店店舗数や立地条件を調査した。
その結果、25の漁港で商店街の形成に漁港の存在が強く影響している事例が確認され、既存の六つの標準類型(寺社門前型・主要街道筋型・近郊駅前型・独立近隣型・計画配置型・闇市発展型)に該当しないことが判明した。そこで本研究はこれらを「漁港近隣商店街」と定義し、地域経済や観光政策における独立した分析単位と位置付けた。
さらに、漁港取扱高と商店街の営業状況とを比較したが、有意な相関は見られなかった。一方、交通結節性の関係は弱い相関として認められた。最寄駅からの距離が約4 kmと遠い三崎下町商店街は、マグロブランドや周遊きっぷなどの施策により比較的高い開店率を維持していた。これらの結果は、漁港近隣商店街の存続・活性化には単なる漁業規模ではなく、交通アクセスや観光施策を含む複合的な要因が鍵となることを示している。