地方公共交通は、沿線人口の減少や諸経費高騰、さらに自然災害による脅威に直面している。特に近年、異常気象の頻発により地方鉄道が被災する事例が増加し、復旧や廃止の選択が課題となっている。本研究は、日本全国の自然災害で不通となった鉄道路線を整理し、その特徴を明らかにすることを目的とし、九州地方を事例に不通後の復旧動向を考察する。
新聞記事データベースによると、鉄道不通の記事数は2011年以降増加しており、特に豪雨による被害は2017年以降顕著で、九州地方の記事が多い。戦後、自然災害による廃止鉄道路線は29件・770.5kmに上り、水害が主因である。時期別では1950~1970年代に多く、2000年代以降再び増加傾向にある。地域別では九州が廃止延長で突出しており、近年ではJR在来線が大きな影響を受けている。戦後の鉄道廃止の特色としては、「鉄道復旧が当然だった1950年代」「私鉄短距離区間の廃止が進んだ1960年代」「JR発足前の不採算路線整理が進んだ1990年代」「自然災害の大型化による廃止が増えた2020年代」に分類される。
JR九州では2012~2023年度に自然災害で1カ月以上不通となった事例が12件あり、特に豪雨による被害が多い。12件中10件は鉄道で復旧されたが、復旧には平均320.5日を要している。一方、日田彦山線はBRTで復旧し、肥薩線の一部は鉄道復旧を目指すが、全線復旧には課題が多い。今後も長期不通に備えた対応策が求められる。