抄録
本稿では,実際の統計データから,日本の大学図書館における ILLに関して,現状分析を行ない,更に,今後の ILLシステムにおける問題点を提起した。
今回の分析結果から,私立大学図書館と比べて,国立大学図書館の ILLへの積極的な姿勢が示唆された。これは,国立大学において,学術情報センターを中心とした大学図書館ネットワークへの参加率が非常に高く,大学図書館間の相互協力活動に対する理解が浸透しているためと考えられる。今後は,私立大学図書館も含めた日本全国の大学図書館間の相互協力活動が円滑に行われるように,私立大学図書館においても,大学図書館ネットワークに積極的に参加することが望ましい。
また,受入雑誌種数の極端に少ない大学図書館では,図書館間文献複写サービスの受付件数が少なく,また,依頼件数も伸び悩んでいる。これらの大学図書館では,学内の研究,及び,教育活動を活性化し,他大学図書館とのより緊密な協力体制を確立するために,学術雑誌を充実させることが重要である。