農業市場研究
Online ISSN : 2424-0427
Print ISSN : 1341-934X
論文
野菜マーケティング・ネットワークの変化と農民所得への影響 : バングラデシュ北部・ボグラ県における事例研究
ムハンマド ムンスール ラーマン安部 淳万 国偉アブドゥール ラシッドアブドゥール バリ
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 16 巻 1 号 p. 17-28

詳細
抄録
バングラデシュ北部のボグラ県は有数の野菜産地であるが、大河ジャムナ河を渡河する橋がなく、人口1200万有余の巨大消費市場・首都ダッカの中央卸売市場カワラン・バザールへの出荷はほとんどなかった。1998年のジャムナ橋建設を契機に農産物マーケティング・ネットワークが変化し、中央卸売市場カワラン・バザールと結ぶ新たなチャネルができ、当該地域はダッカを中心とする農産物広域市場圏の一角に組み込まれた。ジャムナ橋を利用すると、輸送時間が大幅に短縮し、流通諸経費が削減でき、当該地域とダッカとの通交が容易になった。その結果、農民自身がカワラン・バザールに直接出荷できる一方で、多くのバイヤーが当該地域の市場に到来し農民から直接買い付けるようになり、高い価格で野菜が販売できるようになった。本研究は、(1)ジャムナ橋の架橋を契機とする野菜のマーケティング・ネットワークの変化が生産農民の農産物販売の収益性の改善に与えた影響を、ポテトを対象に、架橋以前の1998年と架橋後の2003年とのネット・マージンを分析し、その変化を明らかにした。(2)ネット・マージンや所得の増大程度が、大農、中農、小農、土地なし農の農民階層によって異なり、上層ほど高いことを明らかにした。階層によってアクセスできる市場、販売可能なバイヤー、輸送手段、生産費、流通コスト、販売価格、販売数量などが異なり、上層ほどこれらの有利な組み合わせを選択が可能であった。その結果、経済的収益性とその変化程度に農民の階層性が生じたのであった。
著者関連情報
© 2007 日本農業市場学会
前の記事 次の記事
feedback
Top