農業市場研究
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論文
バングラディシュにおける製糖工場のサトウキビ調達システム問題に関する研究
ウディン アブル・ファイズ・MD・ブラハンIzumi IWAMOTO
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2009 年 18 巻 2 号 p. 21-33

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抄録

近年、バングラディシュの製糖工場は赤字に陥っている。すでに二つの製糖工場が閉鎖された。もし他の工場も操業できなくなれば、バングラディシュは40万トンの砂糖を輸入しなければならなくなり、64万人の農民と多くの製糖業労働者が職を失うことになる。したがって、砂糖産業を救済するための戦略は、サトウキビ生産者、労働者およびその家族のために極めて重要である。それはまたバングラディシュの外貨を節約することにもなる。事例としたシャムプール製糖工場はランクプール地区にあり、救済すべき製糖工場の一つである。シャムプール製糖工場の赤字は2005〜2006年には4,121万タカに達している。製糖工場は全製糖シーズンを通じて十分なサトウキビを得られないために、製糖能力以下の操業しかできない。これまでの研究によると、サトウキビの供給が不十分なことが製糖工場の赤字の原因だと言われている。したがって、この問題を解決するには、製糖工場が十分なサトウキビを得られない調達方法の問題を明らかにする必要がある。同時に、サトウキビ農家が、政府の禁止通達にもかかわらず、グル生産者にサトウキビを販売する理由について明らかにする必要がある。本研究では、農家がグル生産者にサトウキビを販売する合理的な理由があり、サトウキビ不足と採用されているサトウキビ作付方法、および製糖工場のサトウキビ調達方法には相互関係があるという仮説を立てて、検証をすすめた。その結果、シャムプール製糖工場は調達方法に季節的な不均衡が生じていることが明らかとなった。この問題を解決するためには、製糖工場はサトウキビ生産農家と工場の要求に合わせて原料調達が出来るように生産計画を調整する必要があること、製糖工場は、生産農家が製糖シーズンを通じて収益を得られるように価格設定を行う必要があること、サトウキビ農家がグルに販売しなくてもすむように調達割り当て計画を農家に周知する必要があること、が明らかとなった。このように季節的な調達の不均衡を是正すれば、製糖工場の操業度を確保し、サトウキビ農家と製糖工場を救済することが可能となることが明らかとなった。

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© 2009 日本農業市場学会
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