2020 年 73 巻 2 号 p. 55-63
抗微生物薬の多くは腎排泄型薬物であるため,腎機能に応じた適正投与量への減量を考慮する必要がある。しかし,薬剤師の知識や経験に差が存在するため,薬剤部全体として適切な疑義照会が行われているとは言い難いのが現状である。そこで本研究では,薬剤師が腎機能に応じた適正投与量の処方監査を行うことを目的として,電子カルテの処方画面変更と腎排泄型経口抗微生物薬への用量調節を提案する2つのシステム(以下,本システム)を構築した。本システムは,1. 電子カルテ処方画面で,腎排泄型抗微生物薬の医薬品名に【腎】と表示する,2. 処方箋に薬物毎の減量基準を示し,過去の腎機能パラメータ推移を表示する,で構成される。
本システム導入前後の6ヶ月間において,疑義照会割合は導入前では1.01%(14件/1380件),導入後では1.56%(20件/1280件)であった。また,疑義照会された薬物の種類は,導入前ではレボフロキサシン1種類のみであったのに対し,導入後では抗ウイルス薬を含む3種類に増加した。これより,本システムは薬剤師による腎排泄型経口抗微生物薬の適正投与量への介入に有用である可能性が示唆された。さらに,医師へのアンケート調査より,【腎】表示後にて,自律的な処方量調節を行った医師は35%増加した。従って,本システムは慢性腎臓病患者における経口抗微生物薬の適正使用に貢献できると考えられる。