抄録
我々は1959年初頭以来, 再び放線菌の産生する抗腫瘍性物質のScreeningをとり上げることとし, その間に得られた知見の一部は既に報じた1) 。すなわち, 一方では, HeLa細胞に対するCytotoxicityをしらペ, 他方ではEHRUCH腹水癌を接種したddマウスに対して放線菌濾液を注射し, 翌日Cytotological examinationをおこない, また連続5日の注射後, 生命の延長効果をも観察した。このように, 最も鋭敏な2系を用いることによつて, 有効濾液をできるだけ見逃さないよう, また短時日に結果が判明するように心掛けた。この仕事を始めるに先立つて, 我々としては既知抗腫瘍物質のHeLa細胞に対するCytotoxic effectを熟知する必要があつた。この点すでに新田の記載23, 4) もあるし, EAGLE5) も合成物質を中心に組織培養細胞の利用にふれているのであるが, Screeningを中心にして考えると, 一定の簡単な判定標準を明らかにしておいて区別にかかることが必要であるし, 新らたに検出頻度とう観点からの整理も可能となる。この意味で我々の得た結果をまとめてみたのがこの仕事であつて, 細かなCytologica1findingにふれることは主旨ではない。この点, 染色所見をも加えて松本が続報6) する予定である。また, 既報したように1), ここに報ずるのは1週間培養のHeLa細胞に物質の水溶液を加え, 24時間~48時間までの経過を低倍率の顕微鏡で観察して判別した成績であつて, いわゆるDegenerative changeに主点をおき, Mitosisに対する影響は考慮に加えていない。ところが入手し得た抗腫瘍性物質についていろいろしらぺてみると, この方法で明らかに個個の物質の特異性をみとめることができた。しかし, 中には類似の所見を呈する物質もあるので, Pulp disc法にょつて抗菌力の比較をもおこなつた。すなわち, 被検菌としてB.subtilis (PCI-219), Staphylococcus aureus (209-P) 〈以下, 209-Pと略), Sarcina lutea (Hata), E.coli (Umezawa), candida histogram (M-9) の順に, 抗菌Spectrumをつくり, これを抗HeLa力 (minimum degenerative dosis) と比較して, histogramであらわし, その示すPatternをAnticellogramと称して鑑別の目的のために加えることにした。我々はかつて, Summarized papergram7) およびElectrophoretic papergram8) を提唱し, 抗菌性物質探究に資するところがあつたが, HeLa細胞に対する所見とAnticellogramとを抗腫瘍性物質のScreeningに利用する場合, 物質の異同判別は抗菌性物質における前記の方法と同じように, かなり高く評価することができるものと考えている。
したがつて本報告で我々は, 既知抗腫瘍性物質のHeLa細胞に対するCytotoxic effectおよびAnticellogramを示すとともに, この方式によつて選ばれた数株の新物質についての知見も加えたいと思う。