The Journal of Antibiotics, Series B
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Chlortetracycline, Tetracyclineの鶏胎仔に及ぼす影響について
曾根田 晃
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1961 年 14 巻 3 号 p. 109-132

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抄録
Chloramphenicolとともに広域抗生剤を代表するTetracycline系抗生剤のうちChlortetracycline (CTCと略), Oxytetracycline (OTC), Tetracycline (TC) についての薬理学的研究は, 既に広範におこなわれ1) 2) 3) 4), 小動物に対するLD50からみると, その毒性はCTC>OTC>TCの順であり5) 6) 7), 大量長期投与時における諸臓器に及ぼす変化のうち, 肝臓に及ぼす組織障害が最も強く現われ, CTC, OTCの大量連続静注, 経口投与によつて肝細胞の脂肪変性, 原形質の空胞化および破壊が発見されたことが報告されている8) 9)。また, 比較的毒性が低いとされるTCの注射によつても, 家兎の肝細胞は崩壊, 壊死像のみられることが北村 (徳大小児科)10)によつて発見され, この現象はTetracycline系製剤の広範に使用されている現況において一般臨床家にも大きな警告となつている。
最近, 本学小児科教室の伊藤11)は, D. D. B. 系純系および市販マウスにCTC, OTC, TC (HCl塩) 1日1回, 20.0mgを10~30回にわたつて経口投与し, 体重増加率を無処置対照と比較して, 体重増加停止傾向は, CTC, OTC, TCの順で, D. D. B. 純系マウスのほうが市販雑系マウスに比較して全身衰弱傾向が強く, また体重恢復傾向が遅く, 肝実質細胞, 腎系球体, 内皮細胞の組織障害の程度は, CTC>OTC>TCの順で, 純系D. D. B. マウスのほうが市販雑系マウスに比較して病変の程度の強かつたことを報告している。
既に本学薬理学教室において, 北村2) は, OTCの艀卵1日, 5日目の卵白内ならびに艀卵9日目の漿尿膜上負荷をおこない, 各負荷群における鶏胎仔の死亡率, 体重, 尿嚢水量, OTCの排泄状況, 肝, 腎, 心臓に及ぼす病理組織学的所見等について一連の研索をおこない, 中村13) はCTCおよびTCの眼球移行状況と鶏胎仔に及ぼす影響, 中島4) はCTC, OTC, Chloramphenico1の鶏胎仔心電図に及ぼす影響について詳細な研究をおこなつて報告している。
以上のほか, 艀化鶏卵を使用しての抗生剤の諸影響について検討した報告に, 薬理学教室東郷15) の邦製Streptomycinと輸入Streptomycin (Merck製) の比較および薬理学教室角尾教授指導による小児科教室の月岡16) のProcaine penicillin GとBornylamine penicillin Gとの比較, 沼尾17) のErythromycinとLeucomycinとの比較および耳鼻科教室竹内18) のFradiomycin等を使用した成績があり, いずれも有意義な結果が報告されている。
既に述べてきたように, 大量連続投与に際して, CTCとTC間には小動物に対して毒性の差のあることが明らかにされているが, 艀化鶏卵を使用しての卵白および漿尿膜上負荷時における諸種影響について, 比較検討された報告をみない。私は, 次の諸事項を中心として, CTCとTCの鶏胎仔に及ぼす諸影響について比較検討をおこない, 一連の成果を収めたので, 報告したいと思う。
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