The Journal of Antibiotics, Series B
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クロランフェニコル (クロロマイセチン) による梅毒の治療第1篇
クロランフェニコルによる駆梅成績
坪井 尚
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1954 年 7 巻 4 号 p. 113-117

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抄録
ペニシリンの発見によつて抗生物質の卓越した治療効果が医学界にクローズアップされてから, クロランフェニコル (クロロマイセチン), クロルテトラサイクリン (オーレオマイシン), オキシテトラサイクリン (テラマイシン) と引続いて新らしい優秀な抗生物質の出現をみるにおよび, これら抗生物質が医療に革新的な進歩をもたらしたことは衆知の事実である。私は昭和26年から抗生物質による駆梅効果研究の一環として, クロランフェニコル (以下CMと略す) による駆梅効果を研究したので, その成績を報告する。
CMはEHRLICHやBURKHOLDER (1947) らにより, 南米べネズエラ地方の土壌から得られた放線状歯のT種Streptomyces venezuelaeから分離されたもので, その後BARTZ (1949) によつて化学的性状,分子式が明らかにされ, REBSTOCK & CROOKS(1949) らによつて構造式が決定され, 近年は本邦でも輪入を待たず製晶化されており, 臨床領域の広範囲にわたり顕著な効果をあげている。CMの臨床的駆梅効果としては, SMADAL (1949) らの報告をもつて嚆矢とし, ついでMCLEAN, et al,ROMANSKY, et al, WILLCOX, ROBINSON & ROBINSON Jr.,LOING, TAGGART, et alらの報告に接するが, いずれにしてもまだ本格的な治験なく, 血清反亦の推移も未明で, 解決の域に達していない。本邦においては, まとまつたCMによる駆梅報告はまだ見出されない。私のおこなつた成績は薬価の高価なためと, 新鮮梅毒の激減期に遭遇したため, 充分治験例をあつめることがではなかつたのは遺憾であるが,その概略を述べ御批判を仰ぎたい。
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