The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域における懸濁用Cephalexin (CEX-Susp.) の基礎的臨床的研究
小林 裕赤石 強司西尾 利一小林 祥男今井 千尋伊藤 英子河野 能子
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1971 年 24 巻 1 号 p. 8-25

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抄録

一般に化学療法の原則は, 起炎菌を検出し, 感受性を測定してのち, 適合抗生剤を充分に使用することであろう。しかし, 小児では, 経過が急速でその暇のないことが多く, また起炎菌を検出しにくい傾向がある。その上, 成人にくらべて, 幼弱児ほどグラム陰性桿菌感染症の比率が高い1)。以上の理由から, 第1選択としてPenicillin (PC), Kanamycin (KM) の併用が賞用されたのであるが, 半合成Cephalosporin C系抗生剤は, 広域で殺菌的であり, しかも耐性菌が少ない点, 上述の条件に一致し, PC, KMの併用とならんで, よく使用されている, しかし, 従来のCephalosporin C系抗生剤であるCephalothin (CET) とCephaloridine (CER) は, 腸管からの吸収がきわめて悪く, 非経口投与しかできなかつたため, その応用に制限があり, 現在開発中のCephazolin (CEZ) 2) も同様である。
Cephaloglycin (CEG) は, 経口投与可能な誘導体として登場したが, 吸収後その大部分が生体内でDesacetylcephaloglycinに変化し, 抗菌力が低下するため, きわめて限られたばあいにしか使用できない3~5)。
Cephalexin (CEX) は, Glaxo社 (英) とLilly社 (米) で独立してほぼ同時に開発されたものであるが, 試験管内抗菌力はCET, CER, CEZ, CEGに劣るものの, 腸管からの吸収が良好で, CER同量筋注時に匹敵する血中濃度が得られ, しかも生体内で変化せず, ほとんどが速やかに尿中に排泄されるので, 充分な臨床効果が期待できるといわれ6~11), 昨年の日本化学療法学会総会シンポジウムにおいて, 各領域での良好な臨床効果が報告されている12)。
しかし, そのほとんどはCapsule剤による成績であつて, 小児科領域では, Capsule剤の使用にはかなりの限界がある。したがつて, 懸濁剤のような剤形が望まれるのであるが, 塩野義製薬はLilly社でつくつた懸濁用内服剤を輸入し, 鳥居製薬はGlaxo社から輸入したCEX末を使用して自社で作製した。これらのCEX-Suspensionの効果については, シンポジウム12) の小児科領域の報告中に含まれてはいるが例数が少なく, その後の諸家の報告13~22) を含めても約160例程度である。われわれも, 昨年 (1969年) 2月からこの両者について検討を始め, その一部の成績は既に予報した23) が, 今回かなりの例数をまとめることができたので, 前回の成績も含めて報告し, 諸家の報告と比較検討したい。
また試験管内抗菌力および血中濃度についても検討したので, あわせて報告する。
なおGlaxo, Lilly両社のCEX-CapsuleおよびSuspensionは, 本質的には同じものであり, 諸成績について有意の差がないことがみとめられている13, 14, 24, 25) ので, 本稿では両者を一括して取扱うこととした。

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