The Japanese Journal of Antibiotics
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新アミノ配糖体系抗生物質Lividomycinに関する臨床的ならびに実験的研究
岩沢 武彦
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1972 年 25 巻 6 号 p. 472-483

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抄録

諸種の感染症に対する化学療法は, 近年国内外において抗菌性物質の研究開発の進歩発展が著るしく, 病原菌の種類や感染病像の様相もかなり変貌してきており, とりわけ耐性ブドウ球菌や緑膿菌, 変形菌, 大腸菌などを主体とするグラム陰性桿菌を起炎菌とする難治感染症の治療対策にようやく化学療法の焦点が絞られてきたように思われる。
とくに, 上気道感染症のばあいには, 前述のような病原菌が分離同定される機会がはなはだ多く, 必然このような病原菌に対応して強力に殺菌的な抗菌力を発揮し, しかも吸収排泄が良好であり, あくまでも生体細胞に対して毒性が少ないすぐれた抗菌性物質の出現がのぞまれている。
Lividomycin (以下LVMと略記) は, 1966年興和株式会社東京研究所にて名古屋市の土壌から分離された放線菌の1種であるStreptomyces lividus n.sp. ATCC 21178の培養濾液中から抽出精製したAminoglycoside系に属する本邦産の新広域抗生物質として開発された。
LVMの理化学的性状は, 無色無臭のやや苦味をもつ無結晶形の粉末で, その分子式は硫酸塩C29H55N5O185/2H2SO4・H2Oで表わされる。LVMの分子量は740 (実測値) で, その化学構造式はFig.1に示したとおりである。
本剤の溶解性に関しては, 水, 酸およびアルカリ水溶液に可溶で, 遊離塩基はメタノールにも溶解するが, その他の通常の有機溶媒には不溶である。また, 硫酸塩粉末の安定性は, 本剤を1年間50℃に放置してもBioassay, Chemical assayでともに安定であるといわれ, LVMの水溶液も氷室保存のばあい, pH5およびpH7で35日間Bioassayで力価に変動がみとめられず, 安定性はきわめて良好であるという。LVMの局所の刺激作用は, 家兎の眼結膜への滴下実験で結膜に影響なく, 刺激作用はみとめられていない。
LVMの急性毒性は, マウスでLD50 246mg/kg (i.V.), 1,343mg/kg (i.m.) であり, ラットでLD50 379mg/kg (i.v.), 1,750mg/kg (i.m.) とされている。
本製剤は, 1Vial中に硫酸LVM500mg (力価) を含有しており, 筋注用として製剤化されている。
著者は今回, LVMに関して, その試験管内抗菌力, 血中濃度, ならびに組織内移行濃度などの基礎的検討をおこなつたとともに, 耳鼻咽喉科領域における代表的な感染症に対してLVMの臨床応用を試みた結果, すぐれた治療成績をおさめえたので, その概要を報告する。

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