The Japanese Journal of Antibiotics
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3', 4'-Dideoxykanamycin Bの作用機作
梅沢 浜夫
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1973 年 26 巻 3 号 p. 306-310

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抄録

抗生物質が細菌感染症の治療に使用されるようになつて以来, 多種類の抗生物質に対して同時に耐性を示すいわゆる多剤耐性菌が次々に出現して来た。1965年に岡本および鈴木11が多剤耐性因子をもつた大腸菌がクロラムフェニコールをアセチル化することによつて不活化してしまうという耐性機構を明らかにして以来, 他の抗生物質に対する耐性機構についても研究が続けられて来ている2)。カナマイシンに対する耐性の機構については, 6-アミノ-6-デオキシグルコース部分のC-3'位に存在する水酸基が耐性菌の生産するリン酸化酵素によつてリン酸化を受け不活化されるという機構が主であることが明らかにされた8) 。リン酸基という容積の大きい, しかも電荷をもつた置換基がC-3'位に存在することによつて, カナマイシンの活性部位 (C-3'の水酸基自体もその中に含まれる可能性があるが) の機能が妨げられ, リボゾームへの結合の親和力が弱められるものと考えられた。この不活化の機構に対処するため, 梅沢らは, C-3'位に水酸基のない, 換言すれば不活化酵素の攻撃部位をもたない誘導体の開発を試み, 3'-デオキシカナマイシンを得4), さらに3', 4'-ダイデオキシカナマイシンB (DKB) を得た5)。また, KOCHおよびRHOADESは, Streptomyces tenebrariusの醸酵炉液から3'-デオキシカナマイシンB (tobramycin) を分離した6) 。これらは, いずれもカナマイシン耐性菌および緑膿菌等に有効であり4, 5, 7), この事実は, カナマイシンのC-3'位またはC-4'位の水酸基がカナマイシンの活性に何の役割も果していない不要な構造部分である可能性を示唆している。この推定を確かめるために, われわれはDKBの種々の生化学的活性をカナマイシンB (KMB) と比較してみた。その結果, DKBの抗菌スペクトラムはKMBのそれに類似している5) にもかかわらず, 生化学的諸効果には差異がみとめられたので報告する。

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