The Japanese Journal of Antibiotics
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高分子抗癌性抗生物質Neocarzinostatinの安定性に関する基礎的研究
I. Neocarzinostatin水溶液の安定性
河野 通治羽田 いそ子小山 康夫菊地 幹雄
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1974 年 27 巻 6 号 p. 707-714

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抄録

Neocarzinostatin (以下NCSと略す) は, 1957年石田らによって報告されたStreptomyces carzinostaticusvar. F-41の生産する抗癌性抗生物質1)で, 18種109個のアミノ酸から構成され, 分子量10,700, pH3.26に等電点をもっ酸性単純蛋白質である2).
NCSは, マウスおよびラットの腹水腫瘍に広い抗癌スペクトルを示し3), 特にマウスのリンパ性白血病L1210に優れた抗腫瘍効果を示す4). また, 化学療法係数の大きい点も特徴である. 一方, NCSの作用機作は, 癌細胞のDNA合成阻害と細胞分裂阻害作用であることが明らかにされている5).
NCSは, 白色の吸湿性の粉末として得られているが, 常温では不安定である6). 本物質の安定性についての詳細な報告はまだ見当らない. 著者らは, NCSの基礎的な化学的および生物学的研究, さらには臨床上の使用にさいして, NCSの失活についてその詳細を知つておくことに重大な意義をみとめ, NCSの失活因子の解明, 安定保存の条件に関する一連の研究をおこなってきた.
これまでの著者らの予備実験によれば, NCSは粉末の状態よりも水溶液で著るしく安定性を増す. このことは, 水がNCSの分子構造を安定に保持するうえで重要な役割を果していることを示唆している. ここでは, NCS水溶液の失活・に関係あると思われる温度, pHおよび光とNCSの活性との関連について検討するとともに, これらの実験結果の反応速度論的解析も同時におこなった.

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