The Japanese Journal of Antibiotics
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術後感染予防 (消化器外科) の臨床的検討CET腹腔内投与時の血中移行とその意義について
松浦 龍二山口 国行増田 正孝牛島 賢一野田 尚一皆川 正美鎌田 重之楢崎 敬明
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1974 年 27 巻 6 号 p. 779-786

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抄録

手術に伴なう予防的抗生剤の使用にあたって, どのような使用法が優れているかという問題や, その警告などについて, 数多くの報告がみられるが, まだ完全に解明されたわけではない1-5). 実際には, 抗生物質の併用によって, 長時間の困難な手術が成功するようになったが, 無菌手術時における術後創感染の起炎菌検出率の調査によると, 局所投与の始まった1963年頃から著名な感染率の低下をみるが, 局所投与がおこなわれていない機関では, その低下は緩徐であり, まだ0%にはなっていない6). これは, 術中の組織の挫滅などによる異常状態の時期に侵入した感染細菌は, 侵入後3時間を過ぎると, その毒素産出も多くなり, 侵入局所に生化学的損傷を与えることになる. したがって, 侵入細菌抑制の目的には, 感染発生後3時間以内に化学療法剤の投与が必要になるであろうと, そして動物実験によって術後感染予防の目的で化学療法をしようとするばあいには, 最少限度5日間は侵入細菌の増殖を完全に阻止する必要があろうと石井は述べている7, 8). また加藤は, 術後に化学療法剤を投与する方法は, 一般に期待するほど有効ではないとして, 術前および術中の投与法をおこない, 創の化膿率を8.3%から1.1%まで減少させたと報告している9).
消化器外科の手術にさいしては, 自己の細菌叢由来による汚染の機会が多く, その予防のための抗生剤は広域性の薬剤が選ばれることが多い. そして, その選択にあたっては, 同様の投与効果が期待できるならば, 薬剤の副作用が重要な選択基準になることは論をまたない. Sodium cephalothin (商品名, ケブリン, 以下CETと略す) は, 腎毒性が低いことが報告され10, 11), 私共も好んで術中の腹腔内投与や術後の全身投与などに使用しているが, 腹腔内投与時の人体内における血中移行の実態などについては, どのようになっているのであろうか. 腹腔内に投与された抗生物質は腹膜を介して血中に移行すると思われており, すでにKanamycin (KM), Streptomycin (SM), Aminodeoxy kanamycin (Kanendomycin Meiji)(KDM) については, 大島の報告がみられるが12), CETの術中腹腔内投与時の血中移行に関しては, まだ報告をみない. 私共は, 腹腔内に注入されたCETの血中移行 (経時的推移) やその意義について検討し, 術後感染予防の目的で使用されたCETの臨床効果などについていささかの知見を得たので報告する.

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