The Japanese Journal of Antibiotics
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ラットにおける実験的混合感染系と抗生物質の評価
横田 好子河野 洋子若井 芳美上村 利明西田 実
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1976 年 29 巻 10 号 p. 859-867

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抄録

抗生物質の有効性についての基礎評価において, 実験的感染に対する治療効果の判定が重要な手段であることは, 多言を要しない。この実験のための感染モデルとして, 今日まで種々の感染系が利用されてきた。たとえば, マウスの全身感染1~3), モルモット, ラットの皮内感染4~6), マウスの気道感染7), ウサギの角膜感染8, 9), ラット, ウサギおよびイヌにおける尿路感染10~13) などが用いられてきた。われわれもさきに, 抗生物質のin vivo評価のためにラットのPouch内感染系について報告した14, 15)。しかし, 多くのばあい,感染実験系としてマウスの全身感染が用いられているのは, 方法が簡易で, 効果判定が容易であるため, 多数の検体を同時に比較評価することができるなどの利点によるものである。
一方, 種々の抗生物質のPharmacokinoticsにおける挙動は一様でなく, たとえばCephalosporin誘導体についてのわれわれの知見では, 7位または3位側鎖のMinor changeによってすら大きく変動することをみとめている16, 17)。さらに, 特定の抗生物質のPharmacokineticsが動物種によつて大きく変化することも, 珍らしい現象ではない18, 19)。したがつて特定の動物を用いる単一の実験系だけで, たとえばマウスの全身感染系だけで抗生物質のin vivo評価を断定することは危険である。他方, 臨床における感染菌種の多様性, 感染症の複雑性などをモデル感染系で再現し, そのような条件における抗生物質の治療効果を検討する必要があると思われる。このような目的のための予備検討として, 尿路感染症の起因菌として最も出現頻度の高いE. coliを中心とし, 他のグラム陰性菌とをラットの腎に混合接種して, 実験的な尿路混合感染系の確立のための条件検討をおこなつた。また, 実験系における治療効果とin vitro抗菌活性との相関性を検討したので, その結果を報告する。

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