The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるSulbactam/Cefbperazoneの基礎的・臨床的検討
豊永 義清黒須 義宇中村 弘典杉田 守正高橋 孝行堀 誠
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1984 年 37 巻 12 号 p. 2457-2477

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抄録

Cefbperazone (CPZ) はいわゆる藤井1)の分類では第5群のCephalosPorins (CEPs) に該当するものであり, PiperacininのDioxopiperazinyl基をCephem骨格の7位のp-HydroxyphenylglycineのAmino基に導入し, 更にMethylthiotetrazol基を3位に導入し, β-Lactamaseに対する安定性が高く, Pseudomonas aeruginsaを含むGram陰性桿菌に対して, 優れた抗菌力を有している2)。しかし, CPZは他の第5群のCEPsに比較した場合, 大腸菌, Klebsiella, Serratia, Indole (+) Proteusなど一部の腸内細菌に対しては, 抗菌力が弱く, 耐性菌の比率が幾分高いのも事実である3)。
これは, CPZはPenicininase (PCase) に対してはR因子支配によるPCase, 及びII型, IV型PCaseには安定ではあるが, I型PCase, Klebsiella pneumoniae GN 69の産生するPCaseにはやや不安定であることによるものとも考えられる。そこで米国Pfizer社では, この点にかんがみ, 自社において, β-Lactamase inbibitorであるSodium sulbactam (SBT) を開発した。SBTは, それ自身は極く少数の菌種を除いては抗菌力は弱く, 単独では抗菌剤としての有用性は少ないが, 各種の細菌が産生するPCase型β-Lactamaseを強く, Cephalosporinase型β-Lactamaseを中等度に不活化し, 本剤をβ-Lactam剤と配合することにより, β-Lactamaseによる失活を防ぎ, 配合された抗生剤の抗菌力を増強することができると言われている。
米国Phzer社は以上のことから, in vitro及びin vivoでの検討を加え, CPZを配合の対象として選択し, 配合比を両剤1:1にした。この配合によりSulbactam/Cefoperazone (SBT/CPZ) は, CPZより更に広範囲の抗菌スベクトラムを持ち, 第3世代CEPsの中で最も広域となり, PCase型β-Lactamaseによる耐性菌にも有効であり, PC結合蛋白 (PBP) 3と1A, 1Bを同時に強く抑え, 強い殺菌作用を示す等の特長が得られた。
今回, 我々はSBT/CPZを試用する機会を得たので, 本剤について, 抗菌力, 吸収, 排泄などの基礎的検討を行うと共に, 各種細菌感染症に使用したので, それらの成績について報告する。

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