The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるSM-4300の基礎的, 臨床的研究
田吹 和雄高木 道生西村 忠史高島 俊夫
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1985 年 38 巻 9 号 p. 2594-2602

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抄録

最近の重症, 難治性感染症の発症は, その背景に宿主側の感染防御機構に何らかの破綻がみられている場合が多く, いわゆるComPromised hostでの発症が多い。又, 近年病原性を発揮する起炎微生物にも変化がみられ, 細菌でも従来病原性の乏しいと言われた菌種によつて, 重篤な病態がしばしば惹起されている。このような現況を打開するため, 抗菌力の強化, 抗菌域の拡大を目的に昨今新しい抗生物質が数多く開発されている。しかし, 特に多彩な背景因子を持つCompromised hostでの感染症治療は化学療法だけで治療効果を上げることはなかなか困難で感染防御に関与する因子の中で, 欠損ないし低下のものの補充が化学療法に併用して, しばしば行われている。
さて, 液性免疫強化の面からヒト免疫グロブリンの投与は従来から試みられてきたが, 静脈内投与可能な製剤であるペプシン処理グロブリンが用いられるようになつてから, 筋注用製剤の使用時にみられる制限条件もなく, 容易に大量投与が可能になつた。ヒト免疫グロブリンによる感染症治療においては, ウイルス感染症に対する有用性は明らかにされているが, 細菌感染症に対する効果の面で, その作用機序は明らかでない点も多い。
今回, 住友化学工業株式会社と日本トラベノール株式会社により共同開発された乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリンSM-4300は, コーンの低温エタノール分画によつて得られたガンマグロブリン分画をイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理することにより, 凝集体を除去したIntact静注用ヒト免疫グロブリンである。そこで, 今回著者らは, 本剤の基礎的検討と, 細菌感染症における臨床的検討を行う機会を得たのでその成績について述べる。

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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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