The Japanese Journal of Antibiotics
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本邦における1979年以降6年間の小児細菌性髄膜炎の動向
第3報 抗生剤の単独又は併用療法と予後について
藤井 良知平岩 幹男小林 裕
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1987 年 40 巻 2 号 p. 284-294

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抄録
1979~1984年間の小児細菌性髄膜炎患児アンケート調査で107施設からの回答症例中, 起炎菌, 予後が明らかで, 抗酸菌, 真菌, マイコプラズマを除いた973例の分析である。
単剤使用は47.9%を占め致命率10.3%で, 2・3剤併用より予後は良い。
単剤使用例はPenicillin系抗生物質 (PCs) が最も多いがAmpicillin (ABPC) が48.7%と第1位であり, Latamoxef (LMOX) を含めCephem系抗生物質 (CEPs) Vが26.8%でこれに次ぐ, 致命率はそれぞれ11.0%, 9.6%であつた。Aminoglycoside系抗生物質 (AGs) 4例中1例死亡, Ch10ramphenico1 (CP) 19例, その他4例に死亡例はない。
2剤併用418例ではAGs併用241例致命率22.4%, AGs以外の併用177例致命率6.8%であり, 2剤併用ではもちろん3剤併用89例を加えても同様AGsの有無による致命率に有意差が存在する。
ABPC+AGsは183例と多く致命率24.0%と高い。PCs相互16例, PCs+CEPs 82例で致命率はそれぞれ12.5%, 6.1%であり, β-Lactam剤にAGs以外のCP, Fosfomycinなどの併用を伴つたものは74例中わずか4例死亡だけという良い成績である。
使用抗生剤の年次的変化はこの期間ABPCの漸減, 1982年からCEPs V, LMOXの急増がみられる。又, ABPC+AGsの低下と逆にPCs十CEPs V又はLMOXの増加傾向がみられる。
単剤療法, 並びに併用療法はAGs併用の有無により3群に分けて年齢との関係をみると, 生後0~3日はAGs併用が最も多く且つ致命率も50%と高い。単剤療法はこれに次ぎ多いが, 致命率は20%に過ぎない。年齢が進むと単剤療法の頻度が増加してAGs併用療法が減少し, 3カ月位で単剤とAGs併用の致命率は変らなくなる。
ABPC単独227例の致命率11.0%に対し, ABPC+AGs (+a) は218例で22.9%と高いが, 死亡例は新生児期から3カ月までに集積する。
ABPC+AGs併用療法の致命率の高い理由について推察を加えた。
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