The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児・未熟児におけるCeftriaxoneの基礎的・臨床的検討
豊永 義清杉田 守正堀 誠
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1988 年 41 巻 3 号 p. 244-261

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抄録

Ceftriaxone (CTRX) で治療した各種細菌感染症の治癒近い時期の, あるいは感染の疑いのある日齢1~28日までの成熟児, 未熟児39例について, CTRX10mg/kg及び20mg/kgを One shot静注し, その後の血清中濃度推移及び尿中回収率を検討した。例数が少ないため, 成熟児, 未熟児に分けず, 日齢ごとに3日以内, 4~7日, 8日以上の3群に分けて比較検討した。臨床的検討を行つたのは, 生後1日から46日までの男児10例, 女児6例で, その内訳は化膿性髄膜炎, 敗血症, 膿胸, 蜂窩織炎, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 (SSSS) それぞれ1例, 肺炎5例, 尿路感染症6例であった。
1. 血清中濃度推移及び尿中回収率
(1) 10mg/kg, One shot静注
3群のピーク値は初回採血時で, その血清中濃度は32.3~35.9μg/mlで有意差は認められず, その後各群とも緩徐に低下し, 6時間で12.7~18.3μg/ml, 12時間でも8.4~13.2μg/mlの濃度を示していた。血中濃度半減期は平均で11.3, 8.8, 17.3時間であった。3群の尿中回収率は, 6時間までにそれぞれ31.0, 27.9, 26.0%であつた。
(2) 20mg/kg, One shot静注 3群とも初回採血時にピークを示し, その血清中濃度は56.5~73.1μg/mlであつた。その後各群とも緩徐に低下して, 6時間で17.9~21.1μg/ml, 12時間で13.2~16.8μg/mlと高い濃度を示していた。血中濃度半減期は目齢が進む程, 徐々に短縮しており, 0~3日で25.5時間, 4~7日11.7時間, 8日以上で10.5時間であった。3群の尿中回収率も, 6時間まででそれぞれ25.5, 22.3, 21.8%であつた。
2. 臨床成績 16例で検討し, CTRX11.9~60.0mg/kg/日の投与量を1~2回に分けて投与した。
重症と思われた化膿性髄膜炎, 敗血症, 膿胸それぞれ1例を含め, すべて有効以上の成績を示した。細菌学的に起因菌が判明したものは, 症例6の肺炎例を除く15例で, その内訳はEscherichia coli 5株, Klebsiella pneumoniae 2株, Staphylococcus aureus5株, Streptococcus pneumoniae2株, Group B Streptococcus (GBS) 1株であり, いずれも経過中に消失した。
3. 副作用
自他覚的副作用は1例も認めず, 臨床検査値異常としてGOTの上昇が1例に認められただけであり, 臨床的に特に問題となる事例はなかつた。

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